第36章 Orbis-交わる世界-
「雨竜くん!!」
「仁科さん!?」
「何で…入院中じゃ…」
「仁科さんこそどうして現世に…」
「別件で来たんだ。雨竜くんはいっちーのところに行くの?」
「井上さんや茶渡くんの様子がおかしくてね」
「それも月島の仕業だ。ねぇ雨竜くん、もしかしてキミを斬ったのは…」
「仁科さんが思ってる通りだよ」
「…やっぱりな」
「もしかして別件って…」
「月島と銀城の件だよ」
「急がないと黒崎が…」
「雨竜くんは先に行ってて」
「仁科さんは?」
「この格好じゃ戦えないし死神化してから行くよ」
頷いた雨竜を先に行かせて梨央は伝令神機を使い、電話をかけ始めた。
「総隊長ですか?」
相手は山本だった。
「実は大至急、頼みたいことがあります」
雨竜くんを斬ったのは銀城
雨竜くんを誘い込んだのは月島
恐らく銀城は
一度月島に斬られている
奴の能力は本当に厄介だ
一度斬れば相手の過去に
自分の存在を“自在な形”で挟み込み
二度斬れば
それを元の形に戻すことができる
彼に一番近付く銀城が
彼に正体を悟られないように
月島の能力を使って
銀城の過去に
“敵としての月島”を
挟み込んだんだろう
彼の完現術を奪い取る
その為だけに…
私の友達を利用し、傷付けた───。
「…絶対に許さない」
死神の力を失った彼は
この17ヶ月のあいだ
力を取り戻す方法を探していた
だが…何一つ見つからなかった
でも完現術と云う方法と出会い
力を取り戻せると思った
やっと自分の力で
みんなを護れると思ったんだろう
だが…それは簡単に崩れ去った───。
「大丈夫だよ」
電話を切った梨央は優しい笑みで微笑む。
「私がキミに奇跡をあげる」
キミの力になれるなら
何度だって手を差し伸べるよ
キミがこの先もずっと
笑っていられるように
私が護ってあげる
「もう一度…みんなを護る力を────。」
どうか彼に────……。
next…