第36章 Orbis-交わる世界-
そう…一護はすっかり忘れていたのだ。
少しの間会わないうちに気が緩んでいた。
彼女と話す時は発言に気をつけねばならない…と。
でなければ…体に大ダメージを受けかねないと…。
「な、失くす訳ねぇだろ!?
ちゃんと身に放さず持ってるって!!」
「それなら良かった」
「(そうだ…忘れてた…)」
一護は冷や汗を流す。
「(また悪夢が…殴られる日々が来る…)」
「どうかした?」
「…ナンデモナイデス。」
「そんなに怯えなくても食べたりしないよ」
「(うっ…悪寒が…。)」
ニコニコと黒い笑みを浮かべる梨央に一護は体を恐縮させる。
その後、銀城との修行がある一護と別れて一人になった梨央が窓の外を見下ろすと…
「織姫ちゃんと茶渡くん」
懐かしい二人に笑みが溢れる。
「ん?」
織姫と茶渡を見て違和感を感じた。
「気のせいか…?」
別に姿形が変わったわけじゃない
普通の日常を普通に過ごしているだけに見える…が…
胸に引っかかるこの違和感は…何だ?
「………………」
銀城
月島
「友達を傷付ける奴は許さない。私が護ってみせる。それが…母様と交わした約束…」
ピピピッ
「!」
伝令神機が音を立てて鳴る。
画面には【雅】と表示されていた。
「本当に仕事が早くて助かる」
現世に来る前、月島の能力についての解析を雅に頼んでいた梨央。その報告が伝令神機に届いたのだ。
「なるほど…そういうことか」
月島の能力は
斬った相手の過去に
自分の存在を植えつけること
「これで違和感の正体がハッキリしたな」
織姫ちゃんと茶渡くんは
月島に斬られ 過去の記憶に
“月島秀九郎”という人物の存在がいたことを
植えつけられた
「厄介だな…」
「何か悩み事かい?」
「!!」
「僕で良ければ相談に乗るよ」
振り向くと涼しげな笑みを張り付けた月島が本を片手に現れた。
「いや…少々厄介事に頭を悩まされている」
「それは大変だ」
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