第36章 Orbis-交わる世界-
「梨央」
「やあいっちー、久しぶりだね。思ったより元気そうじゃないか。あれから一年ちょっとぶりだけどキミに会えて嬉しいよ」
「オマエも元気そうで安心した」
「………………」
「何だよ?」
何故か梨央は頬を膨らませている。
「キミの反応は薄い!!せっかく私が会いに来てあげたのに予想外だよ!!もっと盛大に喜んでくれると思ったのに!!いっちーは17歳になっても薄い反応しか返してくれない冷たい奴だね!!」
「相変わらずだなオマエ」
「前より可愛くなったでしょ?☆」
「…………………」
舌を出して人差し指を頬に付けて笑う梨央を一護は何とも言えぬ顔で見ていた。
「おーい…再会を喜びあってんのは良いけどよ…」
「ああ、話の途中だったか」
「銀城、コイツは俺の友達で名前は仁科梨央。小柄だけどこう見えて強さは俺も認める程の実力で隊長をしてる」
「!?…隊長格…だと?」
「よろしく頼むよ」
「(まだ餓鬼じゃねーか…。
それに…何だこの違和感…)」
すると何かに勘付いた銀城は苦虫を潰したような表情を浮かべた。
「…なるほどな」
「そう警戒しないでよ」
冷たい眼で笑う。
「ところで何でオマエが現世にいるんだ?」
「別件で来たんだよ。ついでにキミに会えたら渡したい物もあったしね」
「渡したい物…?」
「親愛なる友にプレゼントだ」
一護の掌に青い勾玉を乗せる。
「これ…勾玉…ってやつだよな?」
「この勾玉には私の力を封じ込めてある。必ず役に立つ日が来るから絶対に身に放さず持っててね」
「…一応聞くけど」
「何だい?」
「もし…失くしたら…」
「それはもちろん…」
ニコッと笑う。
「キミの命は無いと思ってくれて構わないよ」
「…………っ!!!」
「まさかとは思うが…その質問をするってことは…失くす自信があると…そう受け取ってもいいのかい?」
梨央は黒い笑みでニッコリと微笑んだ。
「(あ…この感じ…)」
一年ちょっと前まで感じていた威圧的な空気。
一護が長年恐れた…────黒い笑顔。
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