第36章 Orbis-交わる世界-
「…どちら様かな?」
一護に向けていた微笑みを消すと梨央は後ろを振り向く。
「自己紹介が必要か?」
少し凹んだ鉄パイプを投げ捨てた。
「初めまして」
偽物の笑顔を浮かべる。
「彼の友達であり…キミ達の敵だ」
鋭い眼光で月島を睨む。
「“キミ達”?おかしな事を言うね」
「事実だろう。キミ達のせいで面倒な仕事が増えた。こっちの苦労も労ってほしいものだ」
涼しげな笑みを張り付ける月島に対し、梨央は冷たい双眼で敢えて月島から視線を外さずに言う。
「雨竜くんを傷付けたのはどっちだ?」
「何を言っているのか解らないな」
「真実を隠すなら別にいい。そのうちキミ達には罰を受けてもらう。私の友達を傷付けた罪は大きいぞ」
低い声で釘を刺せば…
「『インヴェイダーズ・マスト・ダイ』」
カチッ
「何だ!?この───……」
謎の物体に包まれて梨央達はその場から消えた。
「…そうか、未完成な黒崎一護でも僕に接触させたくないんだ。完成に近付けばそりゃ尚更だよね、雪緒」
一人残された月島はフッと笑った。
◇◆◇
「おい…何だよこれ…!?
どうなってんだ!?出せよ!!おい!!」
「はい、ロード終了」
「…ここは!?」
「予備のアジトだ。
快適とは程遠いけどな」
「あれっ、そんな言い方するなら快適にしないよ?」
「過ごしやすいのが一番だよ」
銀城は警戒の眼差しで梨央を鋭く睨む。
「…お前、タダ者じゃねーな」
「そう?ごく普通の一般市民だよ」
「ごく普通の一般市民は戦いの最中に生身の体で突っ込んで来たりしねーよ。しかも鉄パイプで一護の完現術(フルブリング)を止めるなんて余程の度胸と死ぬ覚悟が無けりゃ普通はあんな危険な真似はできねーぜ」
「なるほど…死ぬ覚悟か」
フッと嘲笑めいた笑いを溢す。
「キミの言う通り、私はタダ者じゃない」
「!」
「“霊圧を追ってきた”…って言えばわかる?」
そう答えた途端、銀城の顔つきが変わった。
「…死神か」
「ご名答」
銀城は小さく舌打ちをする。
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