第3章 書類配りI
「書類です」
判子を貰い、受け取る。
「そうだ。キミに頼みがある」
「何でしょうか?」
「これから私がどんな仕打ちを受けても一切の手助けは無用だ。仲間にも同じことを伝えてある」
「な……っ」
「キミには冴島桃香の味方になってもらいたい」
「冗談はおやめください!!」
「悪いが冗談じゃない」
「そんなことは出来ません!!」
「何故?」
「私があの女の味方になるということは梨央様を裏切る行為です!!」
「無理を承知で頼んでる」
「……………」
「引き受けてくれるね?」
納得のいかない砕蜂だったが諦めたように観念した。
「(きっと私が反対したところでこの方の意思は変わらない。梨央様には昔から敵わないな…甘くなったものだ、私も…)」
フッと小さく笑いを漏らす。
「ひとつだけ約束してください」
「何?」
「無茶をするのはやめてください。そしてもうご自分を犠牲にして何かを守るのはやめてください。あの時のようにいなくなられたら…心配です」
「悪いが…その約束はできない」
「何故です!?」
「己の命さえ犠牲にしなければ守れないものがあるからだよ」
「!」
「私はその為に戦う」
「では…貴女様は守るべきものをご自分の手で護るために…自らの命を犠牲にすると…おっしゃるのですか?」
流歌は迷うことなく頷いた。
「…怖くはないのですか?」
「それは…死に対して?」
悲しい顔をした砕蜂は頷く。
「普通は怖いんだろうな」
「え?」
ポツリと零れた言葉は砕蜂に届くことはなかった。流歌は悲しそうな目をしたが、すぐにニコリと笑う。
「ただ無茶は極力しないと約束する」
「極力…ですか」
「協力してくれ」
「…わかりました」
「ありがとう」
「ですが力が必要な時は必ず、この砕蜂を頼ると…約束してほしいのです」
「それは約束しよう」
流歌は小指を差し出す。
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