第34章 Carissimi-愛しい人-
「(ち、近い…///)」
急に距離感が近付いたことで恥ずかしさが込み上げる。日番谷の青緑色の瞳と梨央の青色の瞳が重なり合う。
「お前が好きだ。」
柔らかく笑んだ日番谷の告白の返事に、梨央は目を見開いた。
「強いところも」
「優しいところも」
「頑張り屋なところも」
「仲間や友達を大事にするところも」
「誰かの為に命を張れるところも」
「泣き虫なところも」
「全部ひっくるめて、お前が好きだ」
「(夢、じゃないだろうか…?)」
もしこれが現実なら
この人は今、私を好きだと言った
「(“好き”───。)」
せっかく止まった涙が溢れ出す。
「(隊長が…私を好き───。)」
心の中で何度も繰り返す。
「ありがとな、好きでい続けてくれて」
「(お礼を言うのはこっちだ。こんな私を…好きだと言ってくれるのだから。)」
『お前が幸せになることを誰が許す?』
そう、聞こえた気がした───。
「(この人は私の幸せを願ってくれた。)」
『それはお前の犯した罪を知らないからだろう?だから幸せを願うんだ。』
「(…私の罪なんて誰も知らない方がいい。そうすれば私は望みを果たせる。)」
あの日に誓ったんだ
「(だから今はただ、幸せに浸らせて。)」
永遠じゃなくてもいいから
「私も好きです」
日番谷の手をとって握りしめる。
「でも隊長、これだけは許してください」
「何だ?」
「戦いに於いて私は無茶ばかりします。命を顧みずに行動する場合もあります。隊長を心配させることが多いと思います。それでも私はこの命が在る限り、戦うことを止めるつもりはないので、そこだけは許してください」
ハッキリとそう告げれば、日番谷は溜息を吐いた。
「自分の意思を曲げるつもりはねえんだろ?」
「はい」
「ならこれだけは約束してくれ」
重ねた手を握ったまま、日番谷は真剣な表情で梨央を見て言った。
「死ぬな」
「!」
「無茶をするのは知ってるし、命を顧みずに誰かの為に戦っているのも知ってる。だけど簡単に死んだりするな」
「……………」
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