第34章 Carissimi-愛しい人-
「隊長は…桃ちゃんが…好きなんですか?」
「雛森?」
「や、やっぱ言わなくていいです!」
「聞いてきたのお前だろ」
「だって…怖いじゃないですか」
日番谷が雛森のことをどう思っているのか知りたい反面、知りたくない気持ちもある。複雑な感情がモヤモヤと心を渦巻く。
「お前…自分が死ぬのは怖くない癖に、それ以外は本当に怖がりだな」
「(だって好きな人の“好きな人”の話なんて…誰だって聞きたくないし…)」
「気になるか?」
「…気にならなくもないですけど…」
「お前にはどう見える?俺と雛森の関係性」
「…幼馴染なので仲が良いのは知っていますけど…その…お付き合いされてるとなると…私としては…ちょっと…いえ、物凄く、複雑と言いますか…」
「……………」
「ほ、本音を言うとですね!?お二人がただの幼馴染であればいいな!恋愛感情なんかなければいいな!そしたら…!…そしたら…隊長に好きになってもらえるように頑張るのになって…」
精一杯に自分の思いを日番谷に伝える。
「み、醜いかも知れませんが…」
頬を紅く染めたまま恥ずかしげな表情を見せる梨央の精一杯の想いに、日番谷は自分でも気付かない程に顔を真っ赤にさせていた。
「(コイツがこんなに俺のことを好きでいてくれてたなんて知らなかった。…顔が熱い。)」
手の甲で口元を隠し、恥ずかしげに視線を明後日の方向に逸らす。
「(あぁ俺はこんなにもコイツに愛されていたんだな。)」
嬉しげに口元を緩め、手の甲を外す。そして愛おしげに梨央を見つめる。
「安心しろ。雛森とはただの幼馴染だ。お前が思ってるような関係はねえよ」
「そう…なんですか」
「確かに雛森は大事だ。家族だからな。俺が守ってやんねえとって思う。これは死神になる前から決めてたことだ」
「……………」
「でもな、俺が愛しいと思うのは…俺のことを好きでいてほしいと思うのは…この世でお前だけなんだよ」
「!!」
驚いた顔で日番谷を見る。
「どういう意味か、分かるよな?」
「…自惚れかも知れません」
「自惚れじゃねえよ」
日番谷は自分の額をコツンと梨央の額と合わせる。
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