第34章 Carissimi-愛しい人-
頬を赤く染めながら眉を下げ、恥ずかしげに顔を俯かせる梨央の突然の告白に、日番谷は驚いて目を見開き、言葉を失う。
「…好き…なんです…」
本当は伝えるつもりなんてなかった
でもこの人が
あまりにも真っ直ぐで
とても優しいから
“好き”が一気に溢れてしまう
「日番谷隊長が好きです」
口から心臓が飛び出そうな程の緊張感に堪えられず、ギュッと目を瞑る。紅潮した頬は更に熱を帯び、握った拳に力が入る。
「好き…?」
「っ、」
その声色は戸惑いと困惑が混じっていた。
「(ああ、やっぱり…)」
心臓がキュッと縮み、告白なんてしなければ良かったとすぐに後悔する。
「(迷惑だった…)」
じわりと涙が浮かぶ。
「ごめんなさい…」
「何で謝るんだよ」
「…隊長を困らせてる。本当は伝えるつもり…なかったんです。傍にいるだけで満足なのに…もっと親密な関係になりたいって…思ってしまったんです…」
「!」
「本当の私は欲深い女なんです。隊長とこ…恋人同士…になりたいとか思っちゃったんです。こんな…一方的な想い、迷惑だって分かってるのに…隊長を困らせるって知ってるのに…好きがとまらないんです…っ」
「っ、」
「私のこと、好きじゃなくてもいいから…嫌いにならないでください…」
みっともなく、ポロポロと涙を流し、顔を上げて日番谷を見た。
「お前は本当によく泣くな」
「泣き虫な私は嫌いですか…」
「言ったろ。泣き虫なお前も良いって。むしろ…いつも強いお前しか知らねえから、お前が泣くのは本心が知れたみたいで嬉しい」
そう嬉しげに言い、日番谷は目に溜まった涙を拭ってくれる。その優しさにまた泣きそうになる。
「それから…」
「!」
「勝手にフラれた前提で話を終わらすなよ。俺はまだ、お前からの告白の返事をしてねえぞ」
「…迷惑、でしょう?」
「誰も迷惑なんて言った覚えはねえ」
「だって隊長は桃ちゃんが…」
「なんだ?」
「やっぱりいいです…」
「言いかけた言葉を途中で止めんな。これはお前が言ってる言葉だぞ」
「確かに…そうですけど…」
「ちゃんと聞くから話せ」
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