第34章 Carissimi-愛しい人-
もし…一つだけ我儘を言うなら…
私はこの人の傍にいたい
「…ふふ」
素直に嬉しくて笑いが溢れる。
「なんか…プロポーズみたいですね」
「は!?///」
涙ぐむ顔で笑えば日番谷は頬を紅潮させた。
「ぷろ、ぽーず…ってお前な!」
「ふふふっ」
「俺らしくない台詞だと思ってるが、そうストレートに言われると流石に照れるだろ!」
「隊長だって散々私のこと照れさせたじゃないですか」
「あんな直球に言ってねえだろ」
「それでも照れるんです!」
梨央は少し赤みが差した頬を残したまま、まだ答えを迷っていた。
「私のせいで隊長の心に一生癒えない傷を残すかも知れません」
「!」
「それでも…私を傍におくことを…後悔しませんか?」
不安げに表情が沈む。
「後悔なんてするはずねえだろ」
「言い切りましたね」
「お前は?」
「!」
「俺の傍にいて後悔しないか」
「しません。隊長の傍にいて後悔するわけがない。でも本当に…私の幸せを…」
「疑うなら千羽鶴でも折ってお前の祝福を願ってもいい」
「いいえ。そこまでして頂かなくても十分に伝わります。隊長が本当に私の幸せを心から願い、共に幸せになることを約束してくれた」
だから私も応えなければ
「…わた、私は…」
「!」
「(怖い。)」
怖くて逃げ出したい
今から伝える気持ちは
隊長を困らせてしまうだけだ
それでも伝えなくちゃ
後悔しないように───。
「その…ずっと前から…」
この想いは叶わなくていい
ずっと心の奥底に封印しておこう
誰にも知られないように
誰にも見つけられないように
箱を頑丈な鎖で巻きつけて
想いは隠しておこう
そう思ったのに…
「隊長のことが…」
緊張で声が震えるのが分かる。手が汗で滲む。目を合わせられず、視線が彷徨う。
「(頑張れ、私…!!)」
今伝えなければ
後悔するだけ
それだけは絶対にいやだ
だから勇気を出さなければ
ほんの少し、前に進む勇気を───。
「好きです」
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