第33章 Scelus-罪深き少女-

「その存在さえ隠すことができれば貴様の存在は罪禍に在る限り、永遠に誰の目にも触れることなく、世界から忘れられる。そうなれば脅威的な力に怯えず済むと結論した」



「ん？じゃあ何で私は罪禍に収監されずに今此処でキミと喋ってるの？」



「貴様が何かを仕出かさない限り、無闇に罪禍に閉じ込めることはできない」



「ははーんなるほど…あの連中は私が何かを仕出かす前提で罪禍に閉じ込めることを考えてたのか」



また笑いが込み上げる。



「その予想は大きく外れたな」



いい気味だ───そう言って嘲笑する。



「貴様は怖くないのか？」



「何が？」



「強さを求め手にした先に何があるのか…“その先”を知ってしまう恐怖はないのか」



「恐怖ね…」



「自分でも制御できない程の力を手にしてしまったらどうする。世界を脅かす程の強さを手にしてしまったらどうする。貴様はそれでもまだ…力を欲するのか？」



「……………」



お互いに視線を外さず、無言で見合う。



「手にした力に堪えられず、壊れて消えるかも知れないぞ」



「！！」



“壊れて消える”か…



「私は…戦う覚悟もないくせに強さを求めるなんて馬鹿げてると思ってる」



「……………」



「人は…何かを護りたい時に強さを求める。その大切なものを失いたくないから人は皆、強さを手にして戦うんだ」



「その大切なものを護る為なら人殺しも厭わないか？」



「もう二度と…失いたくないからね」



「…残酷だな、貴様は。大切なものを護る為なら人の命をも奪う。だが貴様は救える命を見捨てないと言った。今の貴様の言葉は矛盾している」



「うん…残酷でも矛盾だらけでも良い。だって…何もできずにただ泣き言を吐くだけなんて…そんなの強さじゃないよ」



ふと悲しい表情を浮かべる。



「私には何を犠牲にしてでも護りたいものがある。それを奪う奴がいれば…人を殺すことだって容易いよ」



「本当に…貴様は残酷だ」



「目の前で人を失うことの方がもっと残酷だよ」



「貴様は目の前で誰かを失った事があるのか？」



「…監視役さん」



梨央は冷たい眼で男を見る。



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