第33章 Scelus-罪深き少女-
「強制捕縛…」
「もちろん捕縛と云ってもあの時のように突然閉じ込めたりは致しません。少々お話をお伺いするだけです」
「……………」
「もし拒むのでしたらこちらにも考えが御座います」
「ほぉ…一体どんな考えだ?」
「第零監獄の管理権を剥奪する…という考えです」
第零監獄の管理は現在、梨央が全てを任されている。その管理権が剥奪されると彼女は『罪禍』との関わりが無くなるのだ。
「それは困るな」
「……………」
「あの監獄は異常者を収監させる為に造られたものだ。罪の過ちを認識させ、懺悔させる為のものだ。しかも第零監獄は蒼月の里が創られたと同時に生まれた場所でもある。だからあの監獄は大事なんだよ。手放す訳にはいかないんだ」
「(監獄を大事と言った…。
罪人が収監される場所だぞ?正気か?)」
「その眼…キミの思っていることが判るよ」
「!?」
「私はいつだって…正気だ」
「っ……!!」
“本当に考えが見透かされている”
男は全身に鳥肌が立った。
「どうか…御同行願います」
決して眼を合わせず頭を下げた。
「どうした」
「は……」
「私と眼を合わせるのが恐いか?」
「い、いえ…」
「この場にいるだけでも悪寒がするか?」
「……いいえ」
「声が震えている」
「!!」
「そんなに緊張するなよ」
「(この少女は異質だ…)」
「別に睡眠を妨害された腹いせにキミを殺したりしないからさ」
ビクッ
何故か男にはその言葉が本気とは思えなかった。
この少女なら───“殺りかねない”。
そう直感したのだ。
「四十六室の御命令なので従って頂かないと…」
「あの連中の判断で私を死刑にでもするか?」
「…その場合もあり得るかと…」
「そうか…“あり得る”か」
途端に梨央は冷たい眼を宿す。
「キミ個人の意見はどうだ」
「は…?」
「キミは私が死ぬのは仕方ないと思うか?」
「それは…」
男はすぐに否定しなかった。
その様子に無表情のまま、溜息を吐いた。
「冗談だよ」
梨央はソファーから立ち上がる。
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