第3章 書類配りI
「永いこと心配をかけさせて悪かった」
「!?」
頭を下げる流歌に驚いた砕蜂は、オロオロしながら立ち上がる。
「頭をお上げください!!貴女様が謝る必要などありません!!全ての元凶はあの男です!!貴女様を貶めたのはあの男なのです!!ですから貴女様が私に謝る必要などどこにもないのです!!」
「違うんだ砕蜂。私の身勝手な判断でキミ達を心配させ迷惑までかけた。本当に申し訳ないと思ってる」
「梨央様…」
「浮竹隊長にも迷惑をかけたんだ…」
「ですが何か理由がおありだったのでしょう?貴女様は理由もなく、やってもいない罪を認めるはずはありません」
「……………」
「皆、分かってます。梨央様が守ろうとしたもの。貴女様はそういう方です。砕蜂は梨央様のその優しさに憧れたのです」
「ありがとう、砕蜂。」
流歌は柔らかく笑んだ。
「でも許せません…。あの男が梨央様を利用し、あんな場所に閉じ込めた事…。そして貴女様を犯人だと決めつけ、自由を奪った四十六室も…!!」
憎たらしそうに顔を歪めた砕蜂はギリッと歯を噛み締める。
「あの連中は私の存在を毛嫌いしているからな。恨まれても仕方ないさ。でも戦闘では貴重な戦力になるから生かしておく。ただそれだけの事だよ、あの連中にとって私という存在は…」
「そんな…それじゃまるで梨央様を都合の良いように利用しているだけではありませんか!」
「所詮は捨て駒だよ。使えなくなったら切り捨てる。でもあの連中は簡単には私を手放さないだろうな…」
「貴女様はそれでいいのですか!?」
「良くないよ」
「!!」
「都合の良いように利用されて腹が立たないわけがない。しかも捨て駒同然に使われて殺してやりたい気分だよ」
「なら何故…!」
「私が手を下さずとも奴らは必ずその身を以って思い知るだろう」
「思い知る?」
「この世に善良な仮面を被った偽善者が存在する事を」
流歌は冷淡な笑みを浮かべる。
「ま、まだ先の未来の話だよ」
「?」
砕蜂は首を傾げた。
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