第33章 Scelus-罪深き少女-
「仲良いっていうか…草鹿副隊長に振り回されてたけどな」
「何であそこまで副隊長に付き合うんだろ?」
「“断る理由”が高峰にはねえからだろ」
「「!!」」
「面倒臭そうにはしてるけどな。
やちるのお守り役には最適なんだよ」
「隊長!お疲れ様です!!」
虚退治を終えて帰って来た更木に隊士達は頭を下げる。
「高峰にやちるを預けて正解だったな」
更木はニヤリと笑う。
「あの隊長…」
「あ?」
「高峰副隊長が草鹿副隊長の遊びを断る理由がないって…どういう意味っスか?」
「理由って程の理由は無えよ。
ただ…“特別”だって前に言ってたな」
「特別…?」
「誰よりも近い存在で誰よりも遠い存在。そういや…高峰が初めてやちるを見た時…驚いた顔してたな」
「驚いた顔…スか?」
「…『何でそこにいる?』」
「え?」
「そう言ってやがったんだよ」
更木は今でもあの時言った蒼生の言葉が忘れられない。
『お前…まさか“─────”か…?』
『何でそこにいる?』
「(あの高峰があんな驚いた顔するとはな…)」
「隊長はどんな意味だと思います?」
「俺が知るか。」
「「Σええーッ!!?」」
興味なさそうに吐き捨てた更木は蒼生が預けた竹刀を隊士から奪い取るとそれを全員に向けて突き付ける。
「稽古はまだ終わりじゃねえぞ。次は誰だ?
俺が完膚なきまで叩き潰してやるよ」
殺る気に満ちた眼光でニヤリと笑う更木に隊士達は一瞬で顔を青ざめさせた。
◇◆◇
その頃────……
「またあっくんの負けー!」
「ハァハァ…ッ」
全力で逃げるやちるを追いかけるも捕まえられず、蒼生は膝に手を付いて肩で息をしている。
「あっくん大丈夫?」
「ざけんな…何でそんなに速えんだよ!」
「だって鬼に捕まりたくないもん」
「だからって逃げ足速すぎんだろ」
「あっくんバテバテ〜」
「こちとら逃げ回るお前を捕獲すんのに必死なんだよ!!」
徐々に呼吸が落ち着いて来た蒼生は額から流れる汗を拭う。
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