第33章 Scelus-罪深き少女-

「何だ？」



「鬼事しよ！」



「断る」



「あっくんが鬼であたしが逃げる役ね！」



「お前はホント人の話聞かねえな!?」



やちるも更木と同じで蒼生に強引なところがある。



「駄目っスよ副隊長。高峰副隊長は今オレらと稽古してんスから」



「えー！そんなの中止ー！」



やちると頬を膨らませて剝れる。



「隊長はどうした？」



「剣ちゃんなら虚退治に行ったよ！」



「何処まで？」



「んーと…そこら辺！」



「適当だなオイ」



「でも剣ちゃん強いから虚倒してすぐ帰って来るよ！」



「(コイツを置いて虚退治に向かったってコトは…)」



チラリとやちるに視線を落とす。



「“預けやがった”な…」



「何をー？」



“お前だよ”



そんな蒼生の目にも気付かず、やちるは不思議そうに首を傾げる。



「ったく…本当にあの人は…」



溜息を吐く蒼生。



更木は何かと理由を付けてはやちるのお守りを蒼生に任せる。否、“押し付ける”と言った方が正しいだろう。それは蒼生が十一番隊に所属していた頃から変わらない。



「ハァ…」



「おっきな溜息だね〜。
幸せ逃げちゃうよ？」



「いらん世話だ」



「ねえねえ！早く鬼事しよーよ！」



「だから副隊長は俺らと稽古が…」



「そんなのいつでもできるじゃん！」



「副隊長の鬼事だっていつでもできるじゃないスか！」



「あっくんはあたしと鬼事するのー！」



やちると隊士達は蒼生を巡って喧嘩を始めてしまう。



「鬼事でいいのか？」



「！！」



隊士達は驚いて蒼生を見る。



「うん！」



それにやちるは嬉しそうに笑って頷いた。



「コレ返すわ」



持っていた竹刀を近くにいる隊士に押し付ける。



「隊長には謝っといてくれ」



「あっくん早く早く！」



「わかったから引っ張んな」



やちるに手を引かれ蒼生は隊舎を出て行った。



「…副隊長も鬼事とかするんだな」



「全然そんなイメージないのにな」



「草鹿副隊長の遊びに付き合わされるなんて気の毒に…」



「あの二人に接点なんてあったか？」



「うちにいた頃には既に仲良かったよな？」



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