第32章 エイユウ ト ワカレノヒ
「察しがいいな。確かにその零道には“もう一つ仕掛けがある”」
「仕掛けだと…?」
「霊圧を極限まで吸収する効果だ」
「!!」
「霊圧が吸収されてキミの力は弱まり、手にした力は消えた」
「崩玉はアナタを主とは認めてないと言ってるんスよ」
「バカな…そんな訳あるか…そんな訳が…そんな訳があるか…ッ!!」
バキン!!
二つの封印具が藍染を苦しめる。
「仁科梨央!!浦原喜助!!私はお前達を軽蔑する!!お前達程の頭脳がありながら何故動かない!!何故あんなものに従ってられるのだ!!」
「“あんなもの”…?
“霊王”の事っスか…?」
すると浦原は静かに目を伏せる。
「…そうか、アナタは見たんスね。霊王の存在が無ければ尸魂界は分裂する。“霊王”は“楔”なんス。楔を失えば容易く崩れる。世界とはそういうモノなんスよ」
「崩壊した世界は荒廃する。そこに残るのは残骸の山々。霊王は“楔”であると同時に終わりを迎えた世界を守る為の“核”なんだ」
「それは敗者の理論だ!!勝者は常に世界がどういうものかでは無くどう在るべきかについて語らなければならない!!!!私は────」
パキンッ
最後の言葉を伝える事なく、藍染は封印によって消え去った。
「当然の報いだな」
これがキミの運命だった
呆気ないものだな
「ああでも…これでやっと…」
永い悪夢が終わった
空を見上げ、にこりと笑んだ。
◇◆◇
「黒崎サン」
「…浦原さん…みんなは?」
「お帰りいただきました。皆さん黒崎サンと話したそうでしたが…同じくらい話しかけづらそうでしたんで」
「!まさか記憶を────」
「…いえ、今回はいじってません」
「…そうか、良かった。もう隠すものイヤだしな、戻ったら俺の口から伝えるよ」
「そういえば浦原、藍染の封印架は何処に運ばれた?」
「瀞霊廷に運ばれました。直に四十六室の手によって処遇が決定されるでしょう」
「そうか」
「…どうしてそんな顔してんスか?」
「…どうしてだろうな。
俺にもよくわかんねえ」
「皆サンの命もこの世界もアナタが命懸けで藍染を倒して護ったんスよ」
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