第32章 エイユウ ト ワカレノヒ
「馬鹿な!!そんな筈があるか!!人間如きがこの私を超えるなど!!そんな事が───」
一護は黒い何かを手繰り寄せる。
「“無月”」
目の前が漆黒の色に染まる。
「っ………」
藍染は倒れるが…
「…まだ再生すんのか…!」
驚く一護だが髪の色が黒から元の橙色に戻り、膝から崩れ落ちる。
「…君の敗けだ、黒崎一護。見ろ、斬魄刀が消えていく…君ならこの意味が解るだろう…崩玉が私に斬魄刀など必要無いと判断したのだ!!斬魄刀とその能力と一体となった君と同じ、いや、今やその力を失った君を遥かに凌ぐ高みへと私は昇り詰める。終わりだ!!黒崎一護!!!」
ガ…ッ
「何だこれは…!!鬼道か…!?
こんなものがいつ…」
ビシ…ッ
「な!!?」
今度は青い鎖が藍染の体をキツく巻き付ける。頑丈に拘束されていて身動きを封じられる。
「…やっと発動したか」
「…ようやく発動したみたいっスね」
ふたつの声が違う方向から聞こえた。
「仁科梨央…!!浦原喜助…!!
お前達の仕業か…!」
「はい。その鬼道はアナタが完全な変貌を遂げる前に…最も油断していた時に別の鬼道を乗せて体の中に撃ち込みました」
「私は一つ目の縛道を囮に使い、二つ目の縛道を撃ち込むと同時に別の零道を見えないように乗せ頃合いを見計らって発動するように仕掛けた」
「あの時か…!」
「…それは“封印”っス。アナタが崩玉と融合した場合、アナタが殺す事はほぼ不可能になると考え、アナタを封印する為に開発した新しい鬼道っス」
「私のも“封印”だ。キミが崩玉を暴走させた場合、キミの力が現世の人間に影響を及ぼすと考え、キミを封印する為に開発した新たな零道だよ」
「…そうか、それは残念だったな…見ろ、私は今まさに更なる進化を遂げようとしている。この程度の鬼道と零道で私を封じる事などできるものか!!!」
ドッ
「な…何だこれは…力が、私の手にした力が…消えていく…!!」
「それが“崩玉の意志”っス。あの時撃ち込んだ封印が今ようやく発動したのはアナタの力が弱まったからっス。それと梨央さんが撃ち込んだ零道も何か仕掛けがあるんスよね?」
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