第32章 エイユウ ト ワカレノヒ
だから お願い
みんなの笑顔を護るために
みんなの日常を守るために
「(強くなりたい────!!)」
“大丈夫”
“自信を持って”
“キミならできるよ”
“だってキミは強いんだから”
どこか儚げで優しい声だった。
その声は
彼方側の世界にいる
もう一つの『私』だった────。
“さあ いつものキミらしく戦って”
“キミの大切なものを護るために───!!”
その声に背中を押されるように梨央の顔つきが変わる。
「…雷鳴の馬車 糸車の間隙…」
「!」
「光もて此を六に別つ 縛道ノ六十一“六杖光牢”」
六つの帯状の光が藍染の体を突き刺す。
「この程度の鬼道で私の動きを奪うなど…」
「縛道ノ六十三“鎖条鎖縛”」
瞬時に太い鎖が蛇のように唸り、拘束された藍染の体に巻き付く。
「二重拘束か…」
パリンッ
「こんなもの私の力を以ってすれば容易く千切れる」
意図も簡単に拘束具が壊されるも梨央の口許には笑みが滲み出ている。
「“全ての準備は整った”」
「!」
その台詞は百年前に藍染が使った言葉だった。
「ギン!!」
その時、乱菊が現れて市丸の傍に駆け寄る。
必死に声をかけるが市丸は返事が無ければ反応も示さない。それでも乱菊は涙を流しながら市丸の名を呼び続ける。
ダンッ
「!」
地面を踏みしめた音がした。
振り返ると気を失った一心を肩に担いだ一護が立っていた。
「…ありがとな…親父…」
「…い…一護…か…?」
「一護だよな…?あれ…なんで髪伸びてんだ…?それに…髪のせいかな…なんか…ちょっと背も伸びてる気がしねえか…?」
「…良かった。遊子と夏梨は無事みてえだ…」
安堵するとたつき達に視線を向ける。
「…たつき、ケイゴ、水色、本匠…観音寺」
そして…
「…イモ山さん」
「Σ誰だ!!車谷だ!!車谷善之助!!わからんならせめてわからんて言ってくれ!!カンで人の名前を呼ぶな!!」
「…みんな、そこに居てくれ。
そのままじっとしててくれ」
「…ど…どういう意味だよ…?一護…」
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