第32章 エイユウ ト ワカレノヒ
「離せ!!」
「そない暴れたら落ちるよ」
「いいから離せ!」
「しゃあないなァ…」
暴れる梨央を地面に下ろす。
梨央は不機嫌そうに市丸を睨む。
「キミ、乱菊さんに何し…」
「なぁ梨央チャン」
「気安く名前を…」
「“あの世界”って…何?」
「!」
「藍染隊長は何処に行ったんやろ」
「…その話はするなと言ってる」
「塔の中で君に似た子を見た言うてたけど…あれは本当に君なんか?ボクは“あの世界”に行ったことないから少し興味があるんやけど」
「答える必要は無い」
「頑なやなァ…そんなに『彼女』について触れられるのが嫌なん?」
「キミ…いい加減にしろよ」
「あら、怒った?」
「……………」
「君を怒らせるのも悪く無いなァ」
「悪趣味め」
「どっちが」
「…何だと?」
市丸は不敵に笑う。
「やっぱ君は昔から変わらへんね。みんな命掛けて必死に戦っとる言うのに君はまるで戦いそのものを愉しんでる様に見える」
「!」
「“遊び感覚で戦ってる君の方が悪趣味”ちゃうかなァ」
その言葉に梨央は顔をしかめて怖い顔で市丸を睨み付けた。
「それも…例の病気の所為だったりしてな?」
「本当にキミは人の神経を逆撫でするな」
「君をからかうんはボクの唯一の楽しみなんよ」
「そっちこそ悪趣味じゃないか」
蔑む様な眼で嘲笑する。
「…何で私まで連れて来た」
「あのままやったら君、藍染隊長を殺すつもりやったやろ?」
「それの何が問題だ」
「何の問題もあらへんよ。でも今の藍染隊長を殺すのは無理や。いくら戦闘能力の高い君でも殺られるのがオチや」
「何故断言できる」
「ボクには判るからや」
「何を根拠に…」
「ずっと近くにおったから」
「……………」
「そや、会ったら訊きたいことがあったんよ」
「断る」
「つれないなァ」
その顔に哀しみの色は無い。
「日番谷隊長とは恋仲なん?」
「!!」
「その顔は図星やね」
「……………」
「あァ…ちゃう。
なんや、君の片思いか」
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