第31章 ホウギョク ト ヒミツ
「あんたもあたし達にとって“大事な友達”だよ」
「!」
「だから…そんな奴に絶対に負けんな」
ああ やっぱり
彼は良い友達を持ったな
「うん、負けないよ」
この戦いを終わらせるために
全力を尽くす─────。
藍染に向き直って息を吸い込む。
そして力強く、声を張って叫んだ。
「───行け!!!」
それを合図にたつき達は走り出した。
そうだ
それでいい
私が藍染を食い止めてるあいだに
少しでも遠くに逃げろ
キミ達は死ぬべきじゃない
絶対に死んじゃダメなんだ
いっちーの泣き顔も
織姫ちゃんの泣き顔も
見たくないから…
だから私は私の仕事をする
彼が笑顔でいられるように
彼女が笑顔でいられるように
みんなが幸せでいられるように
この命を犠牲にしてでも
絶対に護り抜く──────。
「彼等を逃がして自分だけ残るとは賢明な判断だ、仁科隊長。だが鼠が数匹居たところで何の役にも立ちはしない。精々君を守る盾になるくらいだろう、彼等の使い道は」
「…隊長か…久々に呼ばれたな。けど…慕ってもいないくせにそう呼ぶなよ、腹立たしい。それと…人を人とは思わないキミに彼等を侮辱されたくない」
ギロッと藍染を睨み付ける。
「私の大事な友達は殺させない」
「本当に君は異常な存在だ。
いや───“異形なモノ”と云った方が良い」
「………………」
「…只今戻りました、藍染隊長」
「!」
何で彼から乱菊さんの霊圧を感じる?
「…戻ったか。彼女はどうした?」
「殺しました」
「っ…………!」
こいつ今なんて…
乱菊さんを殺した…?
「───確かに霊圧は消えている」
真意を探る為に市丸を凝視するが、その表情からは何も読み取れない。梨央は小さく舌打ちをした。
「…驚いたな、君はもう少し彼女に何かしらの情が有るものと思っていたが」
「情ですか。あらしませんよ、そないなもん。最初にお会いした時に言いましたやろ。僕は蛇や。肌は冷い、情は無い。舌先で獲物捜して這い回って気に入った奴をまる呑みにする。そういう生き物や」
.