第31章 ホウギョク ト ヒミツ
「頑張ってくれてありがとう」
優しい声でニコリと微笑む。
するとケイゴの手から力が抜け、梨央は斬魄刀を引き抜く。
「この斬魄刀の持ち主は…」
「私の斬魄刀を返せばかもの───!!!」
「…あ…アフさん!!」
「斬魄刀を紛失させるとは注意力と責任能力が疑われるな」
「う…ふおおお…何故藍染と零番隊隊長が此処にいる!?」
「今回だけは見逃してやる」
ポイッと刀を車谷に向かって放り投げる。
「良いタイミングで現れてくれた」
「は…?」
「キミ、彼女達を連れて此処を離れろ。
道案内は七羽に頼む」
七羽の頭を撫でると気持ちよさそうに擦り寄る。
「いいかい。絶対に立ち止まるな。息が苦しくても死にそうでも頑張って走り続けろ。一歩でも歩みを止めれば希望は消えたと思って」
トンッとケイゴの背中を軽く突き飛ばす。
「…梨央」
「そんな顔しないでよ。
大丈夫、キミ達は絶対に私が逃がしてあげる」
不安を与えてはいけないと笑って見せるがたつきはどこか辛そうな表情を浮かべた。
「何であんたは自分の危険を顧みずにあたし達を助けるのよ」
「!」
「あたし達を逃がしてあんたが死んだらどうすんだよ!」
「………………」
「そうなったら…あんたが護ってくれた意味が…」
その悲痛な声に梨央はハッキリと告げる。
「私は自分の命を犠牲にしてでもキミ達を護る」
「!」
「キミ達を護ることが今の私の使命」
「…どうしてそこまで?」
たつきに聞かれて一瞬考える。
「…理由を問われるなら…それはキミ達が黒崎一護の大事な友達だから、かな…」
「それだけ…?」
「うん、それだけ」
本当にそれだけだった
「キミ達に何かあれば彼はきっと心配する。そしてキミ達を巻き込んだのは“自分のせいだ”と責め立てる。私は友達の…そんな姿を見るのは辛いんだ」
絶望した一護の姿を見たくない、と梨央は思った。
「だから護る。理由なんてそれでいい」
彼が大事にしているものは
私が守ってあげなくちゃ
みんなが悲しまないように
また、笑っていられるように
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