第31章 ホウギョク ト ヒミツ
「いいなァ…壊したいなァ…」
「この手で────……」
口許を歪めて笑い、掌を見つめる。
「“失せろ”」
殺気を含む冷たい声がした。
それは紛れも無い、梨央の声だ。
口許の歪んだ笑みは消えている。
「『なんだ…もう少しだったのに』」
また、口許に笑みが浮かんで歪む。
「それより面白いな黒崎一護とか云う人間は。
お前が気に入るのも判る」
だが…と言葉を促してニヤリと笑う。
「得体が知れないな、あの男は」
一護を批判し、拒絶する。
「既に気付いているんだろう?
あの男の正体に────……」
意味深な言葉を投げかける。
「黒崎一護…本当に興味深いなァ。
まるで…“あの男”を見てるようだ」
梨央の瞳が大きく開く。
今の言葉に驚いて固まった。
「違う…彼は無関係だ。
“あの男”とは何の繋がりも無い」
だがまた、歪に口許が歪む。
「『知らないフリ』をするなよ。お前は黒崎一護の“真実”に気付いているんだろう?それも…“生まれる前から”」
そして最後にこう続ける。
「何故なら黒崎一護は人間と────」
ドンッ!
斬魄刀を地面に突き刺す。
「私は失せろと言ったんだ」
空気が冷たくなった。
「壊されてたまるか…彼は、希望なんだよ」
“あの男”に対抗できるかもしれない唯一の…
唯一の…希望なんだ─────。
「さて…無駄な時間を費やしたな」
刀を地面から引き抜く。
ザワッ
「!」
遠くで二つの霊圧を感知した。
「浦原と夜一さんが来てるのか」
あっちはあの人達に任せよう
「…たつきちゃん達を探さないと」
藍染が見つける前に
彼女達を助けなければ
「さて“七羽”、彼女達の霊圧を追ってくれ」
その声を合図に一匹の妖狐が地面から飛び出るようにして現れた。
額には小さな赤いダイヤの宝石と不思議な紋章が刻まれている。七つに分かれた尾が揺れ、七羽は甘えたように梨央に擦り寄る。
優しく頭を撫でると気持ちよさそうに鳴く。
「頼むよ」
七羽は目を閉じるとたつき達の霊圧を探り始めた。
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