第31章 ホウギョク ト ヒミツ
ふと目を覚ました梨央は上体を起こす。
「………………」
呆然とした表情で一点を見つめる。
そしてハッと意識を覚醒させると空座町のレプリカが吹き飛ばされたことに驚いた。
「なんだ…どうなった…」
頭に手を当て気を失う前の記憶を思い出す。
「そうか…改造魂魄の爆炎のせいで…」
その顔色から若干の苛立ちを感じる。
「とりあえず藍染を探さないと…」
ザワッ
「!!」
一瞬だけ大きく揺らいだ霊圧を感知した。
「いっちーの霊圧がグラついた」
そうか
藍染と一緒にいるのか
「挑発に乗せられるなよ…」
一護の身を案じながら立ち上がる。
「…まんまとここまで転がされたな」
気をつけろ いっちー
「恐らく今迄のキミの戦いは藍染の掌の上だ」
キミは少し私に似ているから
あの男にとっては
探求に於ける最高の素材だったのだろう
だからこそ藍染は
彼の成長を手助けしてきた
“私との出会いも”
彼にとっては偶然だと思ってても
“全ては藍染が仕向けたもの”だとしたら
彼はまた、絶望するだろうか───……。
「『おかしいと思わなかったのか』?」
ニヤリと口許が歪んで笑う。
「それまでの人生で虚を目にした事さえ無かったあいつが朽木ルキアと出会ってすぐに虚に襲われた事を」
声は彼女の筈なのに喋っているのはまるで別人に聞こえる。
「滅却師が屑虚の滅却に使う撒き餌ごときで大虚が現れた事を」
冷たさを感じさせる、どこか嘲笑した声色だ。
「あいつが死神としての戦いに慣れ始めた頃に、それまで霊圧の補足さえされなかった朽木ルキアが都合良く発見され尸魂界へ報告された事を」
青い瞳も微かに歪んで見える。
「阿散井恋次が、更木剣八が、朽木白哉が、それぞれ皆、あいつの力があいつらの力と拮抗した状態にある時に戦っている事に」
歪んだ笑みのまま、愉しげに言った。
「『どうして一度もおかしいとは思わなかったんだろうなァ…?』」
クスクスと肩を揺らして嘲笑する。
「本当に面白いなァ」
狂気に満ちた笑み。
「コイツが気に入るのも頷ける」
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