第30章 ミガワリ ト レイコク
「ああ、痛みは感じるのか。
なら“好都合”、愉しみ甲斐がある」
色を失った瞳は狂気に染まっている。
「もっと早く殺しておけば良かった」
ニヤリと笑い、刀を縦に構える。
「お前はどんな聲で啼くんだろうな」
鋭い鋒をワンダーワイスの喉元に突き立てようとした瞬間…
「!」
ピンク色の閃光がワンダーワイスの口に集まる。
「(虚閃──!!)」
回避する隙も無く、発射された虚閃が梨央の顔面に直撃し、小さな爆発を起こした。
バァァンッ
白煙が舞い、梨央の顔が隠れる。ワンダーワイスは無表情に見つめている。
「くく……」
「!」
「今のは惜しかったなァ…?」
「!?」
笑い声が響いた。耳を疑うワンダーワイスの顔が驚きに変わる。白煙が消えると、何故か梨央は同情するかのような憐れみの眼差しを向け、口角を上げて笑ってた。
実はワンダーワイスが虚閃を放ち、閃光が顔面に当たる寸前、梨央は刀の刀身部分で虚閃の衝撃を防いでいたのだ。
「虚閃を発射させる時間を掛け過ぎたな。お前の攻撃を刀で防ぐ準備は事前に出来てたよ」
そこでワンダーワイスは思い知る。
“仁科梨央”という化け物の存在を───。
「さて…今度はこっちの番だ」
指先をワンダーワイスに向ける。
「縛道ノ六十二『百歩欄干』」
複数の光の棒がワンダーワイスの身体に突き刺さり、身動きを封じる。
「アー!アアー!」
何とか逃れようと身体を捻ったりするが…
「逃がさない。」
「!!」
「お前は此処で死ぬんだよ、私に殺られてな。だから無闇に暴れるな、縊り殺すぞ?」
怖い表情を浮かべ、物騒な言葉を口にする梨央にワンダーワイスは身体を硬直させた。
「“罪人には死を。”」
ドスッ
「アアアアアッ!!!!」
鋒が眼球を突き刺す。ぐりぐりと刀を深く押し込めば、ワンダーワイスは痛みで激しく暴れ回ろうとするも、縛道で捕らえられている為、ずっと襲ってくる激痛に堪えるしかなかった。
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