第29章 バケモノ ト ジコギセイ
「…さっきの言葉だが」
「!」
「てめえの言う通りだぜ藍染、俺の刀に乗ってんのは憎しみだ。俺はここへ戦いに来たんじゃねえ、暴力でてめえを叩っ斬りに来たんだ!!!」
「…逸るなよ…日番谷隊長」
「…刀に乗ってるのが憎しみならお前も隊長の器じゃない…そう言いてえんだろ。そうだ、俺はてめえを斬りさえすればこの戦いで隊長の座を失っても構わねえ。全力で叩き潰す。鏡花水月を遣う暇など与えねえ…構えろ藍染…構えなくても…容赦はしねえぞ!!!!」
その様子を市丸は遠くから傍観していた。
「…“鏡花水月を…遣う暇など与えない”…?あかんわ、君ら完全に藍染隊長の“力”を履き違えてるわ」
そうだ
藍染が怖いのは
鏡花水月を遣えるからじゃない
ただ単に強いから
「…嘘だろ…」
「みんな…」
一護は目を見開いて唖然としている。その辛い現実に悔しそうに顔をしかめて掌をギュッと握り締める梨央。
ザンッ
「…血迷ったか?隠密機動。それも総司令官が敵の正面に立つとは。戦いに美学を求めるな、己一人の命と思うな、護るべきものを護りたければ倒すべき敵は背中から斬れ。只の死神でさえ霊術院でそう学ぶ筈だ」
「…裏切り者風情が死神の学を語るとはな、笑わせる」
「一度は教鞭も執った身だよ」
「貴様に教鞭を執らせるとはふざけた四十六室だ」
「死者を悪く言うものでは無いよ。足を救われたと言うなら君達もだろう」
「驚いたな、足を救った気でいるのか?
この私の、」
ドン
「…分身か、見世物としては良く出来ている」
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