第29章 バケモノ ト ジコギセイ
「因みに彼女のような“特例の病気”を抱えた者はそれを治そうとしても治らないケースが多いらしい」
藍染は涼しげな表情で淡々と話す。
「…さっきてめえは」
「!」
「光の無い場所であいつは鎖に繋がれ生かされたと言ったな。あれはどういう意味だ?」
「そのままの意味だ。百年前、彼女は平子真子を含めた八名の隊長格を虚化させた」
「!?」
「そして虚化実験主犯及び試行した罪を四十六室に問われ、光の無い場所で百年もの永い時間を監獄で過ごした」
「っ……!?」
「本当に残念で仕方ない」
「!」
「まさか彼女が罪を犯すなんて」
「(何だ…この違和感…)」
心に引っかかりを覚えた。
「(あいつが平子達を使って虚化の実験をしたって言うのか?仲間を傷付けることを嫌うあいつが…?その罪を問われて百年間ずっと…投獄されてたって言うのか…?)」
ふと藍染に視線を向けると彼は深い笑みを浮かべていた。
「!」
そして日番谷は、気付く。
「(まさか…)」
“百年前の真実”に─────。
「…嘘つくんじゃねえよ」
殺伐とした空気が流れる。
「てめえあいつに何しやがった…!!」
怒りで顔が歪み、殺気を飛ばす。
「消そうと思った」
「消す!?」
「彼女はこの世界に存在してはならない」
「…何言ってやがる」
「だから深い闇の底に落とす為の鎖を繋いだ」
「………………」
「そして再び鎖を繋いでもう一度、光の無い場所に戻ってもらう」
薄笑いを浮かべて日番谷に問いかける。
「答えろ…藍染」
その声は静かだが微かに怒りで震えている。
「あいつに濡れ衣を着せたのはてめえか?」
「最後まで気付かなかった彼女が悪い」
「…………っ!!」
あまりの言葉に刀を握る手に力がこもる。
「そのおかげで我々は罪を問われずに済んだ」
「あいつを何だと思ってやがる…!!」
「なら君は彼女を何だと思っている?」
「!!」
「君達の知る仁科梨央は誰かを護る為ならどんな犠牲も厭わない強くて優しい少女だ。だがそれは…本当の仁科梨央なのだろうか」
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