第29章 バケモノ ト ジコギセイ
「(この感じ…)」
時々、梨央から感じる強烈な威圧。全身が震え上がりそうな恐怖に一護は声すら出ない。
「答えて。キミはどこまで知ってる?」
一護はその空気に呑まれないようにグッと堪える。
「知らねえ世界で目が覚めた。俺はどこかの屋敷にいて、そこでお前に似た子供と母親に会った。理由は分からねえけど、二人には俺の姿は見えてないみたいだった」
「…見えてない?」
「そしたらすげェ地震が起こった」
「!?」
「窓の外を見たら白い光が隕石みてぇに降ってて、それが原因で強い地震が起きてるんだって分かった」
「っ!!?」
そこで梨央は顔を青ざめさせた。
「それで…キミはどうしたの?」
「声が聞こえたんだ」
「声?誰かに呼ばれたの?」
「オマエの“もう一つの片割れ”」
「!!」
「梨央」
一護は真っ直ぐな目で梨央を見る。
「オマエから話してくれるまで俺は無理に聞いたりしねえ。俺がいた場所は何処だったとか、あの白い光のこととかオマエの過去についてとか…オマエの口から話してくれるまで、俺は何も聞かねえ」
「……………」
「だから…これからもずっと一緒に戦ってくれ」
一護の言葉に瞠目する。梨央は返事の代わりに眉を下げ、切なげに微笑んだ。
「キミが目を覚ました場所は私の屋敷だよ」
「!」
「そしてキミと“もう一つの片割れ”が出会った場所は…“私達”の遊び場だった」
懐かしそうに目を細める。
「隠れんぼ、鬼事、天体観測…色んなことをしたなあ…」
そう言い、一護を見て笑む。
「そしてキミがいた場所は私の生まれた里」
「!」
「幸せだったんだ、あの頃は…」
「……………」
「でも…何でかな…キミはいつか、私の罪(秘密)を知ってしまう気がするんだ」
「!」
梨央は悲しげに笑った。
「さて…戦いに集中しよう」
「(そうだ…今は戦いに集中しねえと…)」
一護は遠くで戦いを繰り広げている隊長格と平子達を見つめる。
「(誰の心配をしてるんだ。仮面の軍勢と隊長格じゃねえか!!よく見ろ、戦いの行方を─────)」
.