第29章 バケモノ ト ジコギセイ
「随分と考え無しに突っ込んでくるね。
命知らずな事だ日番谷隊長」
「誰かが斬り込まなきゃ始まらねえだろうが。機を失わせるのもてめえの術中だ。褒めといてやるぜ、一太刀目に鏡花水月を遣わなかった事はな!」
「こちらこそ褒めておくよ」
ガン!
「一対一で向かって来ない聡明さはね」
「卑怯だって言いたいのかい藍染隊長」
「そう聞こえたなら訂正しよう京楽隊長」
◇◆◇
「冬獅郎…京楽さん…」
「…黒崎一護、仁科隊長、礼を言う。貴公らがあの瞬間に藍染に斬り掛かってくれなければ…儂は怒りのままに藍染に斬り掛かり…そして斬られていただろう、有難う」
「狛村隊長…」
「あ〜あ」
「「!」」
「ナンで織姫ちゃん連れて帰って来えへんねん。織姫ちゃんおったら一も二もなく目の前の俺ら治してくれたら俺らピンピンで藍染と戦えとったハズやのに」
「平子…」
「世の中そう物事は上手く進みませんよ」
「そんなん解っとるわ。ま、そういうのに流されへん卯ノ花さんと一緒に帰って来てんからカンベンしたるわ」
卯ノ花の傍には上半身だけ斬り捨てられたひよ里の体だけが残されている。
「ひよ里ちゃん…!」
その姿を見た梨央は悲痛に叫ぶ。
彼女を治療しようと懸命に応急処置を施すのは有昭田八玄だ。
「戦いの為には多分そっちのんが正解やわ。
リサ、ローズ、ラブ、行くで」
ダダッ
「いつまで呆けているつもりだ。奴の好きを衝けるのは一瞬だけだ。その有様では機を逃すぞ。我々はこの戦いに死を覚悟したなどと思うなよ、生きる為に戦うのだ」
片腕を失った砕蜂が真っ直ぐに前を見据えたまま言う。
「世界を護るなどというのは聞こえが良い大義に過ぎん。我々は自らを生かし貴様を生かし他の全ての者を藍染の手から護り抜く為に戦うのだ。後れを取るなよ黒崎一護。それと…」
ギロッと一護をひと睨みし…
「梨央様の足手纏いにはなるなよ」
ドスの効いた声で言うと砕蜂は瞬歩で立ち去った。
「なんなんだ…?」
「彼女は心配性なんだ」
「つーかオマエ、平子達と知り合いだったんだな」
「まぁ…百年前からの付き合いだよ」
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