第29章 バケモノ ト ジコギセイ
「鏡花水月の能力と発動条件は相手に始解の瞬間を見せること。私達護廷十三隊はもとより貴方が現世で通じている浦原喜助の一団。そして彼・藍染惣右介の部下である破面や十刃に至るまで現世で戦いに関わる可能性ある全ての者がその始解を目にしています。そう、黒崎さん、梨央さんを除いて」
「確かに隊長格にも匹敵する霊圧を持ち、鏡花水月の始解を見ていないキミの優位性はこの戦いに於いて極めて重要」
「加えて強大な霊圧と並外れた戦闘能力を持つ梨央さんの強さはこの戦いに於いて非常に重要です」
「更に言うならばその優位性を失えばこの戦いは終わりですよね?」
「ええ、ですから黒崎さん梨央さん。“この先の戦いで何が起きても藍染惣右介の始解だけは見ないで下さい”絶対に」
「…わかった、ありがとな卯ノ花さん。戦いの前に聞けて良かった。そんだけ聞けりゃ充分だ…俺と梨央しかいねえんだろ?それなら決まってる、俺達が藍染を倒す」
「安心して下さい卯ノ花隊長。始解の発動条件さえ聞ければ私達で何とかします。“絶対に始解は見ません”。終わらせます、この悪夢のような長き戦いを…」
◇◆◇
梨央と卯ノ花は前線にいる一護の作った霊圧の道を走る。しかし案の定、不安定でボロボロな足場は今にでも崩れそうだ。
「………………」
梨央は嫌な予感を覚えた。
「(あの時の二の舞はごめんだ…)」
彼女は以前、虚圏に入る際に一護が作った足場で酷い目に遭っている。そのことを思い出すと体が身震いした。
「梨央さん?少し顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
「心配には及びません。
少しトラウマに浸っていただけです」
「トラウマ…ですか?」
「ハハハハハ…」
顔を引きつらせて遠い目をしている梨央を見て卯ノ花は不思議そうな表情を浮かべた。
その時だった…。
道がボロッと崩れ落ちて二人は慌てて飛び越える。
あっぶなああああ!!?
また落ちるとこだったよ!!!
やっぱり彼を前線で走らせるんじゃなかった!!!
「あの…黒崎さん」
「よろしければ私が前を走りましょうか?」
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