第29章 バケモノ ト ジコギセイ
「…中の解説はしないヨ。
“来た時と逆に進めば”現世だ」
「…ああ」
「足場にだけは気をつけ給えヨ。中で足場を踏み外せば現世と虚圏の間にあるどことも知れん空間に落ちて帰って来れなくなる。まァそれはそれで面白い資料にはなるがネ」
そんな話に耳を傾けながら一護は高い場所に立って説明している涅をジッと見上げる。
「…何だネ?」
「…いや、そういや浦原さんも俺達を見送るときちょっと高いトコ立って喋ってたなあと思ってさ」
「…ナニ?」
「あんた技術開発局の二代目ってことは浦原さんの弟子かだろ?似たとこあるよ、やっぱり」
「貴様…ッ」
涅が反論する暇も無く、梨央達は黒腔に飛び込んだ。
「…………………」
「…マユリ様…」
「…成程…面白いネ…面白い男だヨ黒崎一護…!黒腔に閉じ込めるのも面白いと思ったが止めだ…!この戦いが終わってからじっくり恐怖に陥れてやるヨ…この戦いが楽しい思い出だったと思い違う程の恐怖にネ…!」
「…了解しましたマユリ様、作戦を考えます」
「ついでにあの化け物を大人しくさせる作戦も考えるヨ。いつまでも自由にさせておくと何を仕出かすか解らんからネ。まァ…死んでも死なんだろうが、あの“死にたがり”は」
忌々しく呟いた涅は蔑む様な双眸を宿した。
◇◆◇
「…黒崎さん」
「!」
「一つお訊きしたいのですが…貴方、以前に双極の丘で藍染惣右介と相対していますね」
「そうだけど…それが?」
「どうでしたか?」
「どうもこうもねえよ。バケモンみたいに強くて手も足も出なかった。向こうは始解もしてねえのに一方的にやられたよ」
「…それは良かった」
「え?」
「それだけの大きな力の差があったことが貴方の最大の幸運です。今のうちにお伝えしておきます。黒崎さん梨央さん、藍染惣右介に対抗できるのは現時点で現世・尸魂界・虚圏全てを含めても恐らく貴方と梨央さんだけです」
「どういう───……」
「教えましょう。彼の斬魄刀『鏡花水月』の能力とその発動条件を─────」
卯ノ花からその条件を聞かされて驚愕した。
「何だって…!?」
「それは確かですか?」
「はい」
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