第28章 ザンゾウ ト カタワレ
ゴクッと生唾を飲み込み、覚悟を決めた一護は恐る恐る隣にいる梨央に顔を向けた。
「あっはっは!」
Σビクッ!!
突然笑い出した梨央に一護は驚く。
「この私を実験台に使うなんて隊長は何を考えてるんですかねぇ」
ニコニコと笑みを浮かべる。
「(怖い!!笑ってんのに怖すぎだろ…!?)」
「忘れているようなので“あの時と同じ台詞”を言います」
ニコニコ笑顔から一転、全ての感情を顔から消した梨央は冷たい双眼で涅を睨み付けた。
その顔は百年前の“あの時と同じ表情”だった。
「『いつ私がキミの実験台(モルモット)になった?』」
その声の低さに完全に恐縮している一護。
普段の梨央からは想像できない豹変っぷりだ。
いやそれよりも、今まで涅に対して敬語を使っていたのにこの時だけ敬語が外れ、対等に会話していることに驚いた。
「『そんなの知らんヨ』」
涅も“あの時と同じ台詞”を梨央に返す。
互いを敵対視し、二人の間で火花が飛び散る。
一護に至ってはその空気(主に隣にいる梨央が放つオーラ)に堪えられず、静かに彼女から離れて近くにいた白哉にコソッと呟く。
「…なぁ白哉、あの二人って仲悪ィのか…?
二人してすげぇ剣幕で睨み合ってっけど…」
「昔からあのような関係だ。性格上の問題で互いに相性が合わない故、兄らが顔を合わせると必ず一悶着を起こす」
「(性格上…互いに気が合わなくて問題を起こす…)」
一護は未だ睨み合っている二人を見る。
「今度モルモット扱いしたらぶっ殺しますよ」
「その前に君が死んでくれるのを心待ちにしているんだが…いつ死んでくれるのかネ?」
「…死ぬわけねーだろ」
涅の言葉が癇に障ったのか、口が悪くなる。
一護は思った。
「(この二人が協力するとか…永遠に無理な気がする。)」
そんな一触即発な空気を和ませるように卯ノ花の声がした。
「心配には及びません。
私も一緒に参りましょう」
「卯ノ花さん…!」
「自ら進んで験体志願とは…酔狂な事だネ、四番隊隊長」
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