第28章 ザンゾウ ト カタワレ
「呼び捨てかネ、半死神の分際で…フン、まァそっちの三人にする様に下の名前でないだけ良しとするかネ」
「寛大だな、その荷車が原因か?」
「その通りだヨ。私は今とても気分が良い。貴重な戦利品を手に入れ、更にこの戦利品を手に入れた場所で黒腔(ガルガンタ)の機構をも解析したのだからネ」
「解析…?黒腔(ガルガンタ)を」
「そうだ!しかもミス無く!時間も半永久!奴の悔しがる様が見える様だヨ!!これで気分が良くない訳が無い!!無礼な猿の鳴き声を聞き流すくらい訳無い事だヨ!!準備しろネム!この半死神と零番隊長を現世に送るヨ!!」
「はいマユリ様」
「!待ってくれ!俺はまだ…」
「五月蝿いヨ、被験体がベラベラ喋るんじゃア無いヨ。これは実験、君は験体二号だ。拒否権も決定権も君には無いんだ」
「実け…。ん?“二号”…ってことは一号は既にいるのか?」
「………………」
一護が考えている隣で涅を無表情で見る梨央。
「失礼ですが涅隊長」
「何だネ?」
「もしかすると“一号”は私なんですかね。そしてその“実験”とやらには私も含んでいるんでしょうか」
決して目を合わさず言えば、涅は心底呆れ返ったように深い溜息を吐き、憐れむような双眼で梨央を見た。
「…本当に君には失望するヨ」
「あ?」
一瞬で、空気がピリッとする。
「それくらい説明しなくても理解し給えヨ。まったく君は昔から融通が利かない無能で役立たずなモルモットだヨ。一号は君に決まってるじゃないか」
梨央は鋭い眼光で涅を睨み付ける。
「何を呑気に傍観してるのかネ?早く行動に移り給えヨ。全く…これじゃア何の為に君を実験台(モルモット)に選んだのか解らんじゃないか」
「(さっきから何言ってんだコイツ!!?)」
容赦ない涅の危ない発言に一護は狼狽える。
ピシィィィ!!!
「っ……!!?」
その時に聞こえた音によって一護は嫌な予感を感じた。
「(今の音…隣から…)」
殺伐としたオーラがビシビシと体に突き刺さる。
「(え…これって修羅場?)」
怖くて隣を振り向かない一護はダラダラと冷や汗を流す。
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