第28章 ザンゾウ ト カタワレ
【虚圏】
仮面が割れてバランスを失った一護の体は前のめりになって倒れた。
「黒崎くん!!黒崎くん!!」
織姫は名前を呼んで一護に駆け寄る。
すると一護の長い髪が消えてウルキオラが空けた孔が塞がった。
「…孔が…塞がった…?」
「超速───……再生か───……!」
ウルキオラは驚いた。
「…く…黒崎…くん…?」
恐る恐る織姫が名前を呼ぶと一護はガバッと起き上がった。
「…俺は…!?胸に孔を…あけられた筈じゃなかったのか…!?」
「黒崎くん…」
「井上…無事か?」
目に涙を溜めながら織姫は力無く笑んで頷いた。
「…石田…!」
「…ようやく…目が覚めたか…」
「その傷…俺がやったのか…?」
「…しぶとい奴だ…」
「…ウルキオラ…!」
響転で雨竜の元に移動したウルキオラは腹部に刺さっている刀を雨竜の体から引き抜くと一護の足元に放り投げた。
「取れ、勝負をつけるぞ」
「…石田を刺したのは…俺か…?」
「知った事か」
「てめえの左腕と左脚を…斬り落としたのも俺か…?」
その問いかけにウルキオラは無言を貫く。
「だったら俺の左腕と左脚を斬れ」
「黒崎くん!!」
「さっきまでてめえと戦ってたのは虚化して意識の消えた俺だ。おれは俺じゃねえ。勝負をつけるなら今のてめえと同じ状態にならなきゃ対等じゃねえだろ…!」
「黒崎…!お前…何を言ってるのか解っているのか…!黒崎…!!」
「───いいだろう…それが望みならそうしてやる」
ウルキオラは一歩踏み出す。
すると黒い翼が砂と散った。
「…ちっ…ここまでか、殺せ」
「……………」
「早くしろ…俺はもう歩く力も残っていない…今斬らなければ勝負は永遠につかなくなるぞ…」
「彼はキミを斬らない」
「!」
「そうでしょ?」
笑んで一護を見る。
「キミはウルキオラを殺せない」
「…………」
「こんな状態で勝負をつけるのは…後味が悪いもんね」
一護の気持ちを汲んだように優しく言う。
グッと言葉を詰まらせた一護は辛そうな顔でウルキオラを見た。
「…断る」
「…何だと?」
.