第28章 ザンゾウ ト カタワレ
「さっきは驚かせてごめんね」
「何のことだ?」
「キミを止めたでしょ」
《其処にいたら駄目───!!》
「あれ、オマエの声だったのか!」
すっかり忘れていたが、思い出したように一護は言う。
「あれは何だったんだ?いや…その前に何でこの世界で俺の姿は見えない?」
「それはこの世界が全く別の場所に在るから。キミは今、意識だけが此方の世界に来ている。だから誰かに会ってもキミの姿は見えないんだよ」
「…あの屋敷に子供がいた。
オマエ、何か知ってるのか?」
「そうだね…女の子の方は梨央だよ。
まだ…壊れる前のね」
「!」
「思い出してごらん。キミの頭の中にかかっているモヤは段々と晴れてきたでしょう?」
「(そういえば…)」
あの幼き少女は青い瞳をしていた。左目の泣き黒子が特徴で、性格もあんな感じだった気がした。
「じゃあ隣にいた女の人は…」
「母親だよ」
「!」
「彼女の大事な人」
にこりと微笑む少女に、一護はこの世界に来てから感じていた強烈な違和感について語った。
「あの屋敷にいた時からすげえ嫌な違和感が体に纏わりついてんだ。そしたらあの揺れが起きた。まるで地震が起こったみてえに…。それにあの白い光みたいなのは何だ?」
「………………」
そこで少女は悲しい表情を見せ、黙り込んだ。
「梨央?」
「!」
「どうかしたか?」
名前を呼ばれて一護を見る。
「あぁ、キミの眼は素敵だね」
「え?」
「ちゃんと見えてる」
「?」
「あの時の彼女の眼は…何も映してなかったから」
そう言って力なく笑んだ。
「あの先を知るには…まだ覚悟が足りない」
「覚悟?何のだよ?」
「彼女の全てを受け入れる覚悟だよ」
「全てを…?」
「彼女と向き合う勇気と受け入れる覚悟が無ければ、キミはあの屋敷で起こった出来事を知ることはできない」
「それって…」
「彼女は色んなものを背負い込んで生きてる」
「!」
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