第28章 ザンゾウ ト カタワレ
その中央には白い机と椅子があり、一護の足は自然と其処に向かう。
「!」
辺りに警戒しながら近付くと、サファイアの宝石が埋め込まれた指輪のネックレスが無造作に置かれていた。よく見ると指輪の内側に何か文字が刻まれている。
「(不思議な力を感じる。)」
指輪に手を伸ばした時…。
「──やあ、こんにちは。」
「っ!!」
急に聞こえた声に驚き、後ろを振り返る。
「そんなに警戒しないでほしいな」
一護の目に飛び込んできたのは…
「オマエ───……」
肩まである柔らかな緑の髪と深海をそのまま映したかのような美しい青の瞳を持つ少女だった。彼女は儚げな雰囲気を纏わせたまま微笑んだ。
「───梨央…?」
その姿に一護は目を見張る。今自分の前にいる少女は髪の長さと雰囲気は違えど、大事な友人の姿と瓜二つだった。
何もかも、梨央に酷似している。
驚いたままの一護にその少女はクスリと笑う。
「!」
「キミは驚いてばかりだね」
少女の瞳はどこか寂しそうだった。
「教えろよ。オマエは誰なんだ?」
「──“誰”…か…。そうだね、早速“答え合わせ”をしようか。こっちの“私”と会うのは初めましてだからね」
意味深な言葉を残し、手を胸に添える。
「私は『梨央』。死神最強と比喩され、零番隊で隊長を務める『仁科梨央』───の…“もう一つの片割れ”だよ」
「もう一つの…片割れ?」
「今の“私”を制御する為だけに生まれた存在。簡単に説明するなら“ストッパー”だよ。彼女が我を忘れて暴走したり、力の制御が利かなくなった場合の『保険』なんだ」
「………………」
「彼女が壊れてしまわない為の…ね」
「それが…オマエ、なのか…」
「そう、それが『私』。だから“向こう側”にいる彼女と意識も記憶も力も全て共有してる。…ふふ、ちっぽけでしょう?“私”の正体」
「…全然ちっぽけなんかじゃねえよ」
「…キミは優しいね」
「優しくはねえだろ」
「そういう人に限って優しいものだよ」
少女は小さく声を零して笑った。
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