第28章 ザンゾウ ト カタワレ
「(親子か。)」
女性の少女を見る目には深い愛が感じられた。少女が興奮気味に何かを話すと、女性はどこか困った顔で笑った。
「お前の気持ちは嬉しい。でも母様なら平気だ。場を踏み荒らす躾のなってない狼は私が必ず倒す」
「(狼……?)」
その言葉だけはハッキリと聞こえた。そして女性は少女の額に口付けを落とすと、扉を閉め、再び険しい表情を浮かべて、その場を立ち去って行った。
「どうなってんだ…?」
何が起こっているのか分からず、一護は混乱した。自分の姿が見えていないこと、自分が今いる場所が何処なのかさえも…全て分からない。
その時だった───。
ドォォォン!!!
「っ!!?」
突如、地震が起こったような凄まじい衝撃が屋敷を揺らす。
「な、なんだ!?」
倒れそうになった一護だが、足に力を入れ、なんとか踏み止まる。そしてふと窓の外に目を向けると…
「…何だよ、あれ…」
空から白い光が隕石の様に降り注ぎ、それが原因で衝撃が起こっていた。まるで爆弾が落ちてきたかのような強い衝撃に一護は言葉を失う。
「一体何が起きてんだ…」
ドォォォン…ッ
「!!」
ハッとした一護は部屋の扉に顔を向ける。あの部屋には幼い少女がいる。心配になって駆け付けようとするが…
「(揺れが強すぎて身動きが取れねえ…!)」
そして一護は壁を伝い、窓の外を見ようとした時だった…。
《其処にいたら駄目───!!》
「!!」
咄嗟に後ろを振り向いた瞬間、強い光が一護の視界を遮った。
「っ………!」
その強烈な光に目を開けていられなくなった一護は腕で顔を覆う。
しばらくして光が収まり、そろ…っと目を開けた一護は腕を退けて驚愕する。
「は!?」
何故か屋敷の外に移動していた。あっけらんとした表情で何が起こったのか理解できず、唖然とする。
「な、何が起きてんだ…?」
後ろを振り向くとあの屋敷がある。さっきまで起こっていた出来事が嘘のようだ。
「(あの揺れも、白い光も、消えた…?)」
一護は驚きを隠せず、辺りを見回した。
「つーかマジで何処だよここ…」
一護は今いる世界に疑問を持ち始める。
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