第27章 ホロウカ ト カイホウ
「空に────…穴があいてる…あの空は本当に偽物だったのか…」
不安そうに表情を曇らせる織姫に梨央は優しく声をかける。
「大丈夫だよ」
「!」
「彼を信じよう」
「うん」
その時、天蓋の上から凄まじい衝撃が襲いかかる。
「きゃ…」
「井上さん!」
「上で何が起きてる…!?」
「…石田くん」
「!」
「…石田くんの力であたしをこの天蓋の上まで運ぶことって…できる?」
あのとき どうして私は
彼女を行かせてしまったのだろうか
「…お願い」
無理矢理にでも引き止めていれば
あんな後悔などせずに済んだのに
◇◆◇
「…すごいね、これ」
「黒腔を通る時に憶えたんだ。虚圏でも使えるってことにここに来る途中で気がついた。もう少し早く気付いていれば戦闘にも応用が利いたんだけどね」
「…石田く…」
ズ……
その時、辺り一面が暗闇で覆われた。
「……………!」
「…な…何だ…!?天蓋の上から…これは…何だ…!?霊圧なのか…!?」
いや 霊圧じゃない
異質なんだ
“霊圧とは別の何か”だと認識してしまう程に濃く重い
まるで空の上に海が在るような感覚───……
「…こんな…」
「…まずい…急ごう…!!」
急いで天蓋の上に出れば目を疑う光景が待っていた。
「…来たか、女」
三日月が昇る夜の世界。
そこだけが別世界のように思えた。
そして高い場所にいるウルキオラが三人を見下す。
「ウル…キ…オラ…」
梨央は衝撃を受けたように驚いて目を見開いた。
「…何を…している…?」
「貴様のその表情(かお)は初めて見るな」
「ふざけるな!!質問に答えろ!!」
キッと鋭い眼光でウルキオラを睨んだ。
「彼に何をしてるかって訊いてんだ…!!!」
音のない静かな世界に激昂した梨央の声が響く。
「…黒…崎…くん…?」
織姫はショックを受けた顔で一護の名を呼ぶ。
意識を失った一護の首にウルキオラの尻尾が巻きつき、その体は持ち上げられている。
.