第26章 ヌレギヌ ト サイカ
「それでも…あいつを助けるんだよ」
「蒼生…」
「助けてやらねえと…俺は兄貴なんだから」
目元を押さえて苦痛に顔を歪める。
「きっと…あいつは泣いてる」
「!」
「独りで泣いてる妹を放っておく兄貴がどこにいんだよ」
微かに揺れている青い瞳で山本を見る。
「俺がそばにいてやらねえと…。
それが…約束だから」
蒼生の顔は悲しげだ。
「梨央から伝言を預かった」
「「「!!」」」
「『必ず帰る 心配するな』」
伝言を受け取ると微かに目を見開いた。
「梨央ちゃん…」
「それから…蒼生、お主にも伝言じゃ」
「!」
「『大丈夫 頑張るよ』」
青い目が大きく見開かれる。
その言葉は蒼生の心にストンと落ちた。
「っ…そう…か…」
「蒼生?」
「なら…俺達も頑張らなきゃな」
何故かその口許に笑みが浮かんでいる。
そして今度は何かを決意したような真っ直ぐな双眼を山本に向けた。
「ジジイ」
その答えとして山本も蒼生の顔をジッと見返す。
「これから俺達はどうすればいい?」
「!!」
「ちょ…何言ってんのよあんた!!」
「零番隊は解散すんだろ?だったら俺達の行き先は何処だ?とっとと発表しろよ」
「蒼生…」
「ふざけんじゃないわよ!!」
まだ解散に賛同していない詩調は蒼生の胸ぐらをガッと掴む。
「あんた!!なに受け入れてんのよ!!このままじゃ本当に零番隊は解散になってあたし達はバラバラになるのよ!?」
「………………」
「隊長にも…百年も会えないのよ!?
あんた心配じゃないの!?」
蒼生は真っ直ぐに詩調を見るだけで何も言わない。それが更に詩調をイラつかせた。
「自分の妹が濡れ衣を着せられたのよ!!少しは悔しがりなさいよ!!」
ビリビリと伝わる詩調の迫力に蒼生は動じない。これには流石の雅が仲裁に入ろうとした。
「悔しいに決まってんだろ」
「!」
「あいつを護れなかった自分に心底腹が立つ。
たった一人の妹を護れず何が兄貴だ」
苛立った様子のその表情には失望の色が浮かんで見える。もちろん、それは自分に向けたものだ。
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