第26章 ヌレギヌ ト サイカ
「そんなの…勝手に決めないでよおぉ〜」
涙が溢れて視界が滲む。
「ふざけんじゃないわよ!!あたし達から隊長を奪っておいてそれでもまだ気が済まないって言うの!?」
詩調の霊力が上昇する。
「そんなのあんたが勝手に決めないでよ!!」
「一色さん、総隊長に向かってそういう言い方は…」
「関係ないわ!!零番隊が解散したらあたし達はどうすればいいの!?何処に行けばいいのよ!!」
「みんなとバラバラになるなんて嫌だよ!!
霙…解散したくない!!」
「それでも既に下った判断を覆す事は出来ぬ」
「!う…うえええーん!!」
残酷な判決にその場に座り込んで泣き始める霙。
「うわあああーんっ!!」
霙の泣き喚く声だけが全員の心を更に締めつける。
「…頼むジジィ」
「!」
「妹を助けてくれ」
蒼生は恥を捨て、山本に頭を下げた。
「高峰…」
「ぐすっ…。蒼ちゃん…」
「あいつを…俺達の許に帰してくれ」
その声色は切なく響く。
滅多に頭を下げない蒼生は大事な妹を助けたい一心で山本に頭を下げ続ける。
「総隊長、蒼生にここまでさせといて…何も言わないつもりですか」
少し強めに発せられた雅の言葉を受け止める。
山本は頭を下げる蒼生の手が小さく震えていることに気付く。
「お願いです。僕達の隊長を帰して下さい」
雅の切実な思いを隣で聞いている蒼生。その表情はとても辛そうで少しだけ…泣きそうだった。
「───ならぬ。」
その一言が、蒼生の願いを簡単に打ち砕く。
「何を言おうとも、それだけは絶対にできぬ」
厳しい声に蒼生は下げていた頭を上げて山本を鋭く睨み付けた。
「…このままあいつを放っておけってのか?」
「お主の気持ちは痛いほど判る」
「何が判るんだよ。あんた総隊長だろ。何で四十六室に抗議しねぇんだよ。俺達の上に立ってんなら…それくらいしろよ!!!」
蒼生は声を張り上げて叫ぶ。
これには泣いていた霙もビクリと反応し、驚いた顔で蒼生を見た。
「解っておるじゃろう。四十六室に抗議できるのは絶対の権力を持つ梨央だけじゃ。それ以外の者が抗議したところで邪険に扱われて終わりじゃ」
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