第26章 ヌレギヌ ト サイカ
「どういうことだジジィ…」
「蒼生…」
流石の雅も驚いた表情を隠せず、隣にいる蒼生を見る。
「つーかその前に『虚化』が何なのか説明しやがれ」
「『虚化』は浦原喜助が死神の魂魄の強化を研究する上で到達した“解(こたえ)”の一つじゃ」
「魂魄の…強化?」
「梨央は罠にハメられたんじゃよ」
「そんな…!」
「罠って…誰に?」
「主犯格である藍染惣右介」
「!?」
「藍染…あの五番隊の?」
「たしか副隊長…だっけ?」
「彼が彼女を罠に掛けたんですか?」
「然様」
零番隊は他の隊との接触があまりない為、藍染の名を聞いてもすぐにはその人物を思い出せなかった。
「なるほど…彼ならあり得る」
「みっくん?」
「彼女が藍染と一緒にいる所を見かけたことがあるんだ。もちろん彼女は心底嫌そうな顔をしてたからあまり彼のことを良く思っていないんだと思う。でも…梨央を見る藍染の眼は普通じゃなかった」
「普通じゃないって?」
「あれは多分…“化け物”を見る眼だ」
「っ……!」
その言葉に敏感に反応したのは蒼生だった。
「化け物って…!!」
「彼はいつも涼しい顔をしているけど…梨央を毛嫌いしてるはずだよ」
「そんなの梨央チャンも一緒っスよ」
「あの男…っ!!」
詩調は怒りを抑えられず、憎たらしそうに顔をしかめる。
「…今回の事件の犯人にさせられちゃったの?」
「何それ!!そんなの濡れ衣じゃないの!!」
「梨央ちゃんは無実なのに!!」
詩調と霙が抗議する中、山本は真っ直ぐに全員を見つめた。
「隊長が不在の今、零番隊を続ける理由はなくなった」
「!」
「心苦しいが今日を以って零番隊は解散とする────」
山本の言葉を呑み込むのに数秒かかった。
「え…?」
「解散…?」
「何…言って…」
「零番隊は解散じゃ」
もう一度ハッキリと言う。
「何…で…どうしてっ!?」
霙が絶望の色を浮かべた顔で叫ぶ。
「隊長がいないだけで…解散って…そんなのおかしいよ!!」
「既に決定した事じゃ」
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