第26章 ヌレギヌ ト サイカ
地下監獄最上層
第零監獄『罪禍』
全てが闇に包まれ
全てを“無”に還す
異常者を収監する監獄である─────。
「今日から貴様の監視を務める」
「ふぅん…キミは怖くないんだね」
「貴様のような子供を怖がるなどありえん」
「私は他の者達から恐れられている。この第零監獄でも“異質な存在”である私の監視を務めようとする者はいない。だがキミは私の監視役に名乗り出た。本当に…イカれてるよ」
「貴様の事は知っている。確かにこの監獄でも貴様は有名人だからな。誰も貴様の監視役を引き受けなかった」
「だからキミが代わりに監視役になったんだろ」
さっきまでの殺伐とした威圧的な雰囲気は消え、元に戻った梨央は憐れむような双眼を向ける。
「ま…興味ないけど」
両手には特殊な手錠、両足は鎖で繋がれていた。
「えーと…名前聞いても忘れるだろうから“監視役さん”でいいよね」
作り笑いを浮かべる梨央を無視して椅子に座った監視役の男は持っていた資料を読み始める。
「監視役さんはあれだね…クソ真面目そうで仲良くなれる気はしないよ」
「なぜ貴様と仲良くする必要がある」
「わーお、監視役さんってば冷たい♪」
「………………」
おどけてみせるが男は無視を続ける。
「いやァ…本当しくじったよ。まさかあの男の術中にハマるなんて思わなかった。前々から怪しいと思ってたんだよねー」
「…………………」
「つーか虚化って何だよ。詳しく知らないし。あの仮面が関係してんのかな。みんなの運命が狂っちゃったよ」
「…………………」
「ねぇ監視役さん、聞いてんの?」
鉄格子の向こう側で梨央は頬を膨らませる。
監視役の男は読んでいた資料から顔を上げて冷たい双眼で梨央を見た。
「今の貴様は“罪人”だ。その立場を忘れてもらっては困る。それと無駄口は叩くな。貴様の声は煩わしい」
「ホント…冷たいなぁ監視役さんは」
膝を抱えて地面を見つめる。
すると監視役の男が徐ろに口を開く。
「…怖いと思ったことはないのか」
「…“怖い”?」
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