第26章 ヌレギヌ ト サイカ
『仁科梨央はこの世界に存在してはならない』
『!!』
『“あれ”は危険だ』
『…危険?』
『彼女は世界から隔離されるべきだ』
『…もう一度だけ聞きます』
『梨央サンに何をさせるつもりですか』
『君が知る必要はない』
『あるんスよ。彼女は…優しい人スから』
『だから何だと言うんだい?』
『優しくて自分を壊してでも大切なものを護る人っスから…梨央サンが傷付くのは見たくないんス』
『…なるほど。君が彼女にそこまで情が深いとは思わなかった』
『情…スか。そんなんじゃないっス。ただ彼女にはとてもお世話になってるんで、その恩返しみたいなもんっス。だから藍染副隊長…。彼女を使って何をしようとしてるのか教えて下さい』
『“鎖を繋げただけ”だよ』
『!鎖…?』
『そう。鎖だ』
『彼女を深い闇の底に落とす為の鎖をね』
『っ!』
『お避け下され浦原殿ォッ!!!』
『破道の八十八!!』
『“飛竜撃賊震天雷砲”!!!!』
「何てことだ…」
平子真子を含めた八名の『虚化』
藍染と市丸と東仙の裏切り
仲間同士の殺し合い
「…………………」
梨央は唖然とする。
「私がもう少し早く駆けつけていたら…間に合ったかもしれないのに!!」
あんな安い罠に引っかかって
馬鹿みたいじゃないか…!!
「!」
頬に手を当てると一粒の涙が流れていることに気付いた。
「…“泣いてる”んだね」
悲しそうに笑って梨央は涙を拭うと隊舎に戻った。
◇◆◇
【零番隊舎】
「ただいま」
「梨央ちゃん…!」
「どうだった?」
「間に合わなかった」
「そんな…!」
「それじゃ…」
「まだ決めつけるのは早いよ。これから平子隊長達の安否を確かめに行って来る」
疲れた体を引きずってドアを開けた瞬間…
ガンッ
「零番隊隊長、仁科梨央様!」
「!?」
「中央四十六室より強制捕縛命令が出されております!」
「御同行願います!」
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