第26章 ヌレギヌ ト サイカ
森林を颯爽と駆け抜け、平子達の場所へと急ぐ。
もし…
犯人があいつだとしたら
何の為に私達を足止めさせたのか
何の為に数㎞離れた場所に虚を出現させたのか
わざわざ…瀞霊廷から離れた場所に。
例えば…平子隊長達が関係してるとしたら?
わざと離れた場所に私達を誘き寄せて
彼らの元に辿り着くまでの時間稼ぎをしてるとしたら?
「!」
そうだ…“時間稼ぎ”だ
全部繋がった──────!!
「頼む…間に合ってくれ!!」
走るスピードを上げて現地に着くと…
「!!」
既に戦いを終えた後だった────。
「ハァ…ハァ…ッ」
息を切らしながら周囲を見回す。
「遅かったか…」
そこには誰もいなく、争いの痕跡だけが生々しく残っていた。
梨央は悔しそうに顔を歪める。
「微かにまだ霊圧が残ってる…。平子隊長達と…浦原に握菱鉄裁…。それに…」
藍染
市丸ギン
東仙要
「くそ…っ!!」
まんまと罠にハマった自分の馬鹿さ加減に苛立ちが込み上げる。
「………………」
梨央は静かに瞼を閉じて意識を集中させた。
僅かな霊圧から“記憶”を読み取ろうとしているのだ。
「(ほぼ消失してて霊圧は辿れないが…“残滓”なら何とか…)」
次第に呼吸も整い始める。
梨央の脳裏に“記憶”が浮かび、此処で起こった出来事が再生される。
『やはり君は思った通りの男だ』
『今夜 此処へ来てくれて良かった』
『退くよ。ギン、要』
『!待……』
『もうすぐ彼女が此処へやって来る』
『!彼女…?』
『“全ての準備は整った”』
『時間稼ぎも成功した』
『“あれ”が仕掛けられたものだと知り、彼女は犯人が誰なのかを探し当てる』
『そして必ず僕に辿り着く』
『…彼女…梨央サンに何をさせるつもりですか?』
『何も。』
『嘘は駄目っスよ』
『彼女は“最後まで気付かなかった”』
『?』
『今日まで何もしなかった。
それが彼女が選んだ選択だ』
『何を言ってるんスか…?』
『彼女は素晴らしい逸材だ。だが…』
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