第26章 ヌレギヌ ト サイカ
「しかも狙ったかのように…」
「おかしいわよ」
「…不吉な感じだね」
「うん…」
「まるで足止めをされているかのようだ」
「!足止め?」
「何の為に?」
「…わからない。でも僕達が此処に誘き出されたのは確かだよ」
「…誘き出された」
「一体誰が…」
「考えても仕方ない。早急に始末しよう」
「でも隊長…」
「雅の言う通り、何者かが意図的に私達をこの場に誘き寄せた。それは間違いないだろう。でもだから何だって云うんだ。全て終わらせてしまえば問題ない」
「…………………」
蒼生は訝しげな表情で梨央を見ている。
その時だった───……。
「な、何!?」
突然、虚達が奇声を上げて暴れ始めた。
「さっきと様子が違うわ!!」
「急に暴れ出した!?」
「どういうことっスかねぇ」
「知らん」
「遊ぶだけじゃ物足りないみたいだよ」
雅が梨央に諭す。
「はぁ…しつこい連中だ。やれやれ…仕方ない、全員制御装置を外して戦え。そして今度は必ず全滅させろ」
各々が霊圧を制御している装置を外す。すると封じられていた霊圧が一気に解放され、刀を構え直し、再び虚の群れを退治する。
◇◆◇
その数分後、周囲は酷い有り様だったが、全ての虚を全滅させた。
「もおー!犯人は何がしたいのー!」
嫌気が差した霙が怒って叫ぶ。
「霙、落ち着いて。犯人が何の為に私達を足止めしたのかは解らないけど、とりあえず総隊長に叱られずに済みそうだ」
いつの間にか雰囲気が元に戻っていた梨央。
「それにしても…やり過ぎたかな」
「これの件に関してはジジィに叱られるな」
「えー…やだなー…」
ザワッ
「!」
その瞬間、遠く離れた場所でいくつかの霊圧が消失したのを感じた。
「ねぇ…今の霊圧…」
「嘘でしょ…」
「まさか…」
「平りん達の霊圧が…」
「キミ達は先に戻っててくれ」
「お前は?」
「この騒ぎを引き起こした元凶を止める」
「気をつけろよ」
蒼生の心配する声に小さく笑んで梨央は瞬歩でその場から消えた。
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