第26章 ヌレギヌ ト サイカ
首を刎ねられた虚の頭が地面にゴトンッと転がる。
「……………」
落ちた首を見つめる彼女の瞳はどこか歪んでいた。
仲間の死に怯えた虚達が逃げ出そうと散らばる。
「逃すか」
愉しそうに笑った梨央は再び刀を構え直すと瞬歩で次々と虚を斬り裂いていく。その度に虚の躰からは真っ赤な血が噴き出し、バラバラに切断された部位が地面に落ちる。
「殺す。一匹残らず…斬り殺す。」
虚の返り血で死覇装が汚れても気にせず、目の前に群がる虚達を斬り続ける。
最後に虚閃を打とうと口を空けた虚を真っ二つに斬った。
「鈍い。」
綺麗に躰を裂かれた虚は血を噴き出して消滅する。
「このままじゃ埒があかないな…」
虚の血で汚れた刀を一振りする。
「こっちは片付いたぞ」
そこに蒼生が瞬歩で戻って来る。
「!」
だが血で汚れ過ぎた梨央を見て思わず顔をしかめた。
「お前…」
「ご苦労。だがまだ気を抜くな」
ふい、と蒼生から顔を背ける。
「一匹残らず始末する。命令通り、一匹も残さず、この世から消し去ってやる。どんな手を使ってでも…」
まるで蒼生など眼中に入っていないかのように自分に言い聞かせる。その言葉は冷たさを感じさせた。
「どんだけ斬っても減らないよぉ〜!」
「どうなってんのよ!!」
「まずいね」
「どんどん瀞霊廷に近付いてってる」
琉生が後ろを振り向き、遠くに見える瀞霊廷を見ながら言う。
「というか消滅するどころか増えてるわ」
「蘇ってんのかなー」
「これじゃオレ達の方がバテちゃうっス」
何十匹の虚を始末したことで体力的にも限界が近い。
多少の息切れはあるものの、まだやる気は充分あった。
「梨央ちゃあ〜ん…」
泣きそうな声を出す霙は梨央に助けを求める。
「…………………」
聞こえていないのか、霙の声を無視して遠くにいる虚の群れを無言で見つめている梨央。
「…梨央ちゃん?」
「何で急に虚の出現率が上昇したんだろうね」
雅の言葉に全員が考え込む。
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