第26章 ヌレギヌ ト サイカ
瀞霊廷から数㎞離れた場所に辿り着いた梨央達。
全員が目の前の現状に驚いた。
「こんなにたくさん!?」
「どうなってんのよ…」
大量の虚が群れを成している。
「大虚(メノスグランデ)ばかりだ」
「瀞霊廷に近付いて来てるっスね」
「めんどくせえな」
「全員戦闘態勢を整えろ。そして刀を抜け」
全員が一斉に刀を鞘から引き抜く。
「隊長命令だ。虚が瀞霊廷に侵入する前に一匹残らず始末しろ!」
五人は瞬歩で散らばった。
「さぁ…愉しく遊ぼうか」
突如、雰囲気を豹変させて不気味に口許を歪めて笑う。
「“お前達”の最期を見届ける為に」
見据える先には虚の集団がいた────。
「沈め『逃げ水』」
始解すると大量の水が津波のように天高く舞い上がる。驚いた虚達が一斉に空を見上げるが、雅は静かに刀を振り下ろす。
蠢くように揺れる水が滝のように一気に落ちて地上にいる虚の群れを凄い勢いで呑み込んだ。
大半の虚が水の勢いに巻き込まれて消滅したが、その衝撃は地面が抉れてしまう程の威力だった。
「鳴り響け『雷鳴鬼』」
地面に突き刺した刀が分散して走り、散らばっていた虚の躰を放電させた。電撃に包まれて放電する虚の躰は夥しい光を放っている。黒コゲになった虚達は灰と化して消滅した。
「煌めき散らせ『雪月花』」
突然周りの温度が急激に低下し、冷気が流れ込む。あまりの寒さに不気味な声を上げた虚達の足元がピキピキと凍りつき、やがて虚達を氷漬けにした。最後は氷に亀裂が入り、砕けて消滅した。
「舞い上がれ『桜姫』」
桜色の拳術を両手に構え、虚に向けて放つ。発射された弾丸は回転数を上げて虚の躰に風穴を空けた。桜の花弁と化した虚達は風に吹かれて消滅する。
「焼き尽くせ『爲坐波』」
解号を唱えると刀に炎が纏う。
逃げ場を失った虚の群れに目掛けて刀を一振りさせる。すると虚達の躰に炎が現れ、その身を焼き尽くす。
悲鳴にも似た奇声を上げると虚達は灼熱の炎に包まれて消滅した。
「闇色に染まれ『天照』」
始解すると銀色の刀が闇色に染まる。
瞬歩で一匹の虚の前に現れると静かな音を立てて構えた刀を無表情で振り下ろした。
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