第25章 フリコ ト カコ
なんなんだ あの嫌味ゾンビ
私が強引で相手を馬鹿にしているだと?
ふざけんな
馬鹿にしてんのはキミだろうが!
人をゴミのような目で見やがって!
「仁科隊長」
「!」
抑えきれない怒りを心の中でぶちまけていれば、突然背後から声をかけられて不機嫌そうな顔で振り返る。
「…何の用だ、藍染副隊長」
「少しお時間よろしいですか?」
そこに立っていたのは涼しい顔を浮かべた男だった。
名は、藍染惣右介─────。
平子真子が隊長を勤める
五番隊の副隊長である。
梨央は藍染を見るなり、不機嫌そうだった顔を更に歪めた。
「キミに時間を割いている暇はないよ」
苛立つように冷たくあしらうも、まったく気にしていない様子の藍染は穏やかな笑みを浮かべて言った。
「お手間は取らせません」
「私は忙しいと言っている」
「すぐに済みます」
そのしつこさに溜息を吐いた。
「…本当にすぐに済むんだろうな」
「もちろんです」
梨央は小さく舌打ちをした。
「随分機嫌が悪そうですが…もしかして十二番隊に行かれたんですか?」
「…………………」
「それとも…僕に会ったからでしょうか?」
判っていて聞いてくる藍染に苛立ち、鋭く睨みつける。
「いい加減にしろよ藍染…」
「気に障ったのなら謝ります」
「キミは性格が悪いな。
判ってることをわざと聞くな」
それに本気で謝る気ないだろ
「実は紹介したい席官がいるんです」
「席官?今年新しく入った奴か?」
「ご存知でしたか」
「どんな奴なのかは知らん。
噂には“天才”と聞いているだけだ」
「ええ、彼は天才です」
「“天才”か…」
「たった一年で真央霊術院を卒業した子なんですよ」
「それは優秀だな」
「あぁ、あの子です」
目を前方に向けた藍染の視線を辿るように同じ方向を見ると一人の少年が待っていた。
色素の薄い紫色の髪をした少年はこちらに気付く。
「やあギン、待たせたね」
藍染に向けていた双眼が、ゆっくりと梨央の姿を捉える。
「どちらさん?」
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