第25章 フリコ ト カコ
「さっき涅サンも言ってたように戦いに於いて力では誰も彼女には敵わない。だからこそ、率先して彼女が戦いに引っ張り出される。どうしてだか解りますか?」
「いえ…」
「勝利を約束されているからっス」
「勝利を?」
「彼女に任せておけば必ず勝つと確信してるから、彼女を戦闘に引っ張り出して命の奪い合いを始めさせるんです」
浦原は梨央が出て行ったドアをジッと見つめている。
「あの人は仲間を護る為ならどんな犠牲も厭わない人っス。だからこそ彼女は“戦いにハマり過ぎると自分で自分を制御できなくなる”。いつ“ガタ”がくるのかも解らないのに、それでも彼女は気にせず、護りたいものを守ろうとする」
「あの人は…たくさんの重荷を背負っているんですね」
「重荷…たしかに…そうかもしれないっスね。あの人は…たくさんの重荷を背負いながら生きている。多分きっとそれは…自分の大事なものを、自分の手で壊さないようにするため」
「どういう…意味ですか?」
「彼女は…自分で自分を壊そうとする人っスから…。」
悲しげに笑った浦原がそれ以上を語ることはなかった。
「それに梨央サンは隊士達の憧れの存在なんスよ」
「それはわかります!
青い瞳がとても綺麗でした!」
「彼女は優しい人っス。ただ…」
「?」
「さっきも見ていて判ったと思うんスけど…梨央サンと涅サンは仲が良くありません。顔を合わせれば必ず一悶着起きます。なんていうか…犬猿の仲なんス、あの二人。だから彼女はあまり十二番隊には来たがらないんスよ」
「そうなんですか…」
「でも勘違いしないで欲しいっス」
「!」
「仁科隊長は決して救える命を見捨てない優しい人だということを覚えておいて欲しいんです」
「はい…!」
まだ幼い少女は出会って喋ったこともない梨央に憧れを抱くようになる。
「私も…いつか仁科隊長みたいに強くて優しい方になれるでしょうか?」
「もちろんっス」
浦原は小さな隊士に笑いかけると書類を再発行する為に部屋を出た。
「…フン、あの小娘を“優しい”と思っているなんてイかれてるヨ」
悪態をついた涅は、訝しげに呟いた────。
.