第25章 フリコ ト カコ
「言葉を返すようだが…君こそ強引で相手を馬鹿にする態度は改めた方が良いと思うがネ。戦いに於いて君は優秀だ。誰も君には敵わないヨ。だからこそ君は自分より弱い奴を見下している傾向がある。図に乗るのもいい加減にし給えヨ」
負けじと涅も梨央を睨みつける。
「それと融通が利かない無能で役立たずな君をわざわざ実験台に選んでやったんだ。一応君は他のモルモットよりも多少は使い道はあるから仕方なく今後も使ってやるがネ。有難いと思い給えヨ」
殺伐とした空気がその場を包み込む。
これには隊長である浦原も二人の喧嘩には口出しできなかった。
周りの隊士達もその空気に呑まれて顔を青ざめさせてオロオロした様子で二人の喧嘩を遠巻きに見ている。
「ろくでもない研究ばかりに気を取られているといつか“流れ玉”に巻き込まれるぞ。ま、その“流れ玉”をご所望であれば今すぐ此処で現実にしてもいいんだが」
彼女の背にある刀が音を立てて鳴る。
隊士達は緊張の面持ちで生唾をゴクリ…と呑む。
「けど…此処を殺人現場にしたくないからな、さっきのキミの発言は全て水に流そう。キミの血で刀が汚れるのは嫌だからな」
梨央は刀から手を離す。
「浦原!書類だ!受け取れ!」
近くにいた浦原に歩み寄って強引に書類を押し付けた。
「仕事があるのでこれで失礼する」
「あのコレ…提出期限が過ぎて…」
「知るか!」
「えぇ…」
少し強めに閉められたドア。
「ハァ…再発行っスね…」
浦原は困った顔をする。
「あの隊長…」
「!」
「今の人は…誰ですか?あまり見かけない方でしたけど…隊首羽織を着てるってことは…隊長さんですか?」
「そうか…君は配属されたばかりで知らないんスね」
「はい」
「あの人は零番隊の隊長サンっスよ」
「零番隊?」
「護廷では処理し切れない虚の討伐や危険な仕事を引き受ける隊っス。席官は六席までしか在籍しておらず、それぞれの戦闘能力は十三隊を遥かに凌ぐ程の力です」
「そんなにすごい隊なんですか!?」
「中でも今来た隊長…仁科梨央サンは“最凶”と名の付く死神で超人並みの戦闘能力を誇る最強の戦士っス」
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