第25章 フリコ ト カコ
「失礼する」
「何の用だネ」
「別にキミに用はない」
入った途端に互いの姿が視界に入った二人は露骨に嫌そうな顔を浮かべた。
「用が無いならとっとと出て行き給えヨ」
「“キミに用はない”と言ったんだ」
案の定、不穏な空気が流れ始める。
「ああ、そこにある試験薬を取って貰えるかネ」
「それぐらい自分で取れ」
「近くの物を取って渡すだけの作業を面倒臭がるとは…正直君には失望したヨ。せっかくのモルモットがこんなにも無能で役立たずなんて…君を実験台に選んだのは間違いだったようだ。少しはモルモットとしての自覚を持ったらどうかネ?」
「…………」
「仲間の為なら自らの命を犠牲にする“便利な道具”がいると訊いて興味を持ったのに…これじゃ本当にただの不良品だヨ。そうは思わんかネ?」
「…浦原」
「はい?」
「キミは席官が一人減っても平気な奴か」
「え?」
梨央は刀に手を添えている。
「勘弁して下さい。此処が殺人現場になるのはゴメンっスよ」
「だが隊を乱す席官がいても迷惑だろう」
「はて?それは君のことかネ?」
「キミに決まってんだろ」
「部外者は出て行き給えヨ」
「あ?」
「使えないモルモットは用済みだ。それとも…私の実験の為に死んでくれるのかネ?」
「言葉には気をつけろよ…涅」
鋭くて冷たい双眼が涅を睨んでいる。
そして梨央はギロッと浦原に視線を移す。
「君の教育はどうなってる…」
「ひよ里サンにも言われました」
「“言われました”じゃない。部下の態度は上司であるキミが改めるべきだ。それから涅、いつ私がキミの実験台(モルモット)になった?」
「そんなの知らんヨ」
「まあまあ二人とも。喧嘩はその辺にして…」
「キミは黙ってろ」
ピシャリと言い放つ。
彼の傲慢な態度に苛立ちが止まらない梨央は訝しげに顔をしかめて涅を怒りを含んだ双眼で睨みつける。
「いいか涅。キミはその横柄で傲慢な態度を改めない限り、誰もキミに従う奴はいない。況してや人を道具のように扱う最低な奴が同じ死神だとは認めない。それと二度と私をモルモット扱いするな、不愉快だ」
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