第25章 フリコ ト カコ
「えーと…どちら様っスか?」
「どちら様だと思う?」
「聞いてるのはこっちなんスけど…」
「あはは、そりゃそうだ」
顔をしかめた彼に気にせず
梨央はおどけた様に笑う。
「キミのことは知っている」
「え?」
「九年前の新任の義で見かけたからな」
「でもあの場には居なかったスよね?」
「まぁ…“私達”は十三隊とは別に扱われているからね」
「どういう意味っスか?」
「そうだな、自己紹介をしよう」
青い瞳が男を映す。
「零番隊隊長、仁科梨央だ」
「!?」
「以後お見知り置きを」
梨央の言葉に男は衝撃を受けて目を見開いた。
「王族特務…!!」
「お、それを知っているのか」
「(零番隊…彼女が隊長…こんな────)」
「何か言いたそうだね」
「!」
「私は人の心を読むのが得意なんだ」
「あの……」
「ああ、応えなくていい。代わりに私が答えよう。キミが私に対して何を思っているのか」
「……………」
「“こんな子供が本当に隊長なのか?”」
「っ!」
「───と…疑っている」
思いを見抜かれて男は動揺する。
「すみません…決して悪気は…」
「いや、キミは悪くない。初めて私に会った奴は必ずキミと同じ思いを抱くからな。疑うのも無理はないさ」
申し訳なさそうに謝る男に対して梨央は気にしていない素振りを見せる。そんな中、男は彼女との会話で妙な違和感を感じていた。
「(彼女の話し方…何か引っかかる。まるで…目の前にいる彼女じゃない誰かが発している言葉のようにも聞える…)」
男は訝しげに顔を歪める。
「(いや…それよりも…彼女の独特な雰囲気は…)」
「キミに一つ、忠告しておくよ」
「!」
男はハッとして梨央を見た。
「考えていることをあまり表情に出さない方がいい」
「あ……」
「それは戦闘にも影響が出る。気をつけたまえ」
「…………………」
「安心しろ」
「!」
「疑わずとも私は隊長だ。それでも信じられないなら総隊長にでも聞いてみるといい」
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